不動産のような実物資産には、金融資産とは異なり、「歪み」からの収益が期待できます。
「歪み」とは情報が一部の人たちだけに独占され、知っている人と知らない人の格差が生まれている状態です。株式や為替のようなマーケットで情報が共有されている資産には、この歪みがほとんど存在しません。短期的に解消されてしまうので、人を出し抜いて収益を上げることが難しいのです。
アクティブ運用の投資信託のファンドマネージャーがインデックスに勝てなかったり、証券会社のストラテジストの予想が2回に1回しか当たらないのは、仕方のないことなのです。
不動産の場合、有益な物件情報は、インナーサークル内でしか得られず、知っている人だけが超過収益を得ることになるのです。
歪みからの超過収益が狙えるのは、実物資産だけではありません。クレジットカードのポイントや航空会社のマイルも同じです。
クレジットカードによって、ポイント付与のルールに違いがあり、これが歪みを生み出しています。
例えば、納税ならこのカードで上限いくらまで、航空券の購入ならこのカードで上限いくらまで、と知っている人は効率的にポイントを獲得。
そして、そのポイントを今度は有利なやり方でマイルに交換して、航空券を低コストで手に入れているのです。
しかし、このような有利な交換方法が一般的に広がると、カード会社や航空会社がルールを変更してきます。すると、今まであった歪みが消えて、超過収益が得られなくなってしまうのです。
だから、この手の情報も本当に価値のある内容は、ネット上ではなくインナーサークルでやり取りされています。
ルールが改訂されればされるほど、例外が増えて仕組みが複雑化します。そうなると、知っている人と知らない人の情報格差は、さらに大きくなってしまいます。
歪みからの収益は、これからますますインナーサークルで独占されていくことになります。そして、インナーサークルの外にいる多くの人は、そんな情報が存在していることにさえ気がつかないで、毎日を過ごすことになるのです。
インターネットが普及すればするほど、インナーサークル情報に価値が生まれる。何とも不思議な「情報のパラドックス」です。
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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2019年12月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。