なぜ首里城はたった2週間で5億円を集められたのか

駒崎 弘樹

10月31日未明、衝撃的なニュースが日本中を駆け巡りました。

沖縄を象徴する場所の一つであり、世界中から多くの観光客が訪れる「首里城」が、火災により7棟全焼。

沖縄戦での破壊を乗り越え、今年1月に約30年にわたる再建工事が完了したばかりでした。

那覇市が11月1日から再建のための寄付を募ったところ、世界中から寄付が殺到し、わずか2日で、1億円。11月13日には5億円を超え、現在では10億円を超えています。

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寄付集めに使われたのは、「ふるさと納税」のスキームだった。

たった2週間で5億円、1ヶ月で10億円を超える寄付金が、どうやって集められたかご存じですか?今回寄付集めの方法として使われたのは、あの『ふるさと納税』です。

首里城再建のための寄付集めは、ガバメントクラウドファンディング(以下、GCF)という、簡単に言うと「ふるさと納税」を利用したクラウドファンディングを利用しています。各自治体が解決したい問題を具体的にプロジェクト化し、それに共感した人からふるさと納税を募る仕組みです。

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2週間で5億円が集まった理由①:スピード

GCFの特徴の一つは、立ち上げスピードの速さ。一番支援が必要なときに、すばやく、多くの支援を受けられます。

今回の首里城火災では、10月30日の火災発生の2日後には寄付受付ページがオープンしました。ニュースを多くの人が目にし、「なんとかしたい!」「みんなで応援しよう!」という気持ちが高まっているうちに、寄付を受け付けることができました。だからこそ、2週間という短期間で3万人を超える人からの支援が集まったと考えられます。

残念なことですが、どんなに悲しいニュースもいずれ風化し、関心は薄れていきます。

今回は短期間で資金を調達開始できたことで、首里城を再建出来る可能性は飛躍的に高まりました。

2週間で5億円が集まった理由②:実質負担2,000円で数万~数十万円の寄付も可能。寄付したお金が簡単に戻ってくる!

GCFは、ふるさと納税を利用しているため、控除を受けることができます。

2000円を超えた分の寄付額が、来年の住民税から差し引かれます。所得によって定められている限度額以内であれば、実質2,000円の負担で数万円~数十万円の寄付が可能になります。

つまり、これまで寄付したことのないあなたも、持ち出しは2000円だけ、あとは税金分の数万円が寄付にまわせるというお財布が痛まない仕組みなのです。

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また、ワンストップ特例制度*を使えば、申請書に必要事項を記入して支援先の自治体に送るだけで、確定申告無しで簡単に寄附金控除が受けられます

*ワンストップ特例制度とは、確定申告をする必要のない給与所得者等であれば、ふるさと納税をした後に確定申告をしなくても寄附金控除が受けられる仕組み。1年間の寄附先が5自治体以内ならという条件はありますが、「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」に必要事項を記入し、寄附した自治体に送るだけで寄附金控除が受けられます。詳しくはこちらをご覧ください

このように、首里城再建に短期間で多額の支援が集まったのは、GCFの特徴を上手く活かした、というのも大きな要因だといえます。

ふるさと納税のトレンドは社会貢献へ

返礼品が規制された影響もあり、ふるさと納税の本来の目的を見直す動きが高まっています。また、短期間で多くのお金を集めることができるGCFは、災害時の復興支援などといった社会貢献にとても有効です。

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例えば「ふるさとチョイス」では、2014年に「ふるさとチョイス災害支援」の仕組みを立ち上げました。12月現在、全プロジェクトを合わせて64億円を超える寄付が集まっています。もちろん、豪華な返礼品はありません。「課題を解決したい」という気持ちが地域を支え、そこに住む人々を救っています。

ふるさと納税は返礼品で選ぶ時代から、目的で選ぶ時代へと変わりつつあります。

報道されない社会課題も――こども宅食、3年目の挑戦

「返礼品なし」のふるさと納税の先駆的事例となったのが、2017年の「こども宅食」立ち上げのためのGCF(東京都文京区)です

豪華な返礼品を用意した自治体ばかりが多くの寄付金を集める中、「返礼品なし」で目標額の4倍以上の金額を集め、無事に事業をスタートさせることができました。

「こども宅食」は経済的に困難な家庭に対して食品を届ける事業です。自治体と民間団体の協働事業です。

今年のふるさと納税が決まっていないあなた、今年のふるさと納税は返礼品ではなく、目的で選んでみませんか?

文京区で行う「こども宅食」のモデル開発支援はこちら
「こども宅食」全国展開化を支援!


編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2019年12月10日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。