私が愛読する『朝日新聞』の記事によれば、10月30日に枝野幸男氏と小沢一郎氏が会食したようだ。
この2人は水と油、不倶戴天の仇のような関係だ。なんといっても小沢氏は民主党を割って出ていった人物であり、この分裂が民主党崩壊の原因の一つである。これに対して、枝野氏は民主党を守ろうとしてきた人物だ。
険悪だった2人だが、ともかく会食をした。このこと自体を小沢氏は評価し、次のように語ったという。
「君子は変わる。枝野君を見直した」
朝日新聞ではないが、「ちょっと待って欲しい」といいたくもなろう。
ここで想定しているのは「君子豹変す」との言葉だろうが、大前提である「君子」とは何か。
それは立派な人物であるということだ。私にとって、枝野氏が立派な政治家だとは到底思えない。
ここで私が思い出したのは、『大学』にある言葉だった。
「小人閑居して不善を為す」
こちらの方が適切だと思うが如何であろうか?
つまらない人間は暇になると悪事に走るということだ。どうせ政権奪還など出来ないと諦めムードが広がる中で、政策など全く無視して野合に走り、国民に注目してもらおうとする。これは「小人閑居して不善を為す」の典型的な事例だと思われる。
小沢一郎氏が戦後史上、良くも悪くも大きな政治家であったことを否定するつもりはない。何しろ、自民党という巨大政党を二度も破ったことがある政治家は小沢氏しかいないだろう。
ただ、小沢氏のやり方には限界がある。それは政策の違いなどどうでもよく、とにかく数を集めて、「打倒与党」の掛け声だけで勝利するというやり方だ。
このやり方の弱点は、「打倒」が終わった段階で既に目的は達成されてしまい、どのような政権運営をしていくのかが見えない点にある。
例えば、原発政策で立憲民主党と国民民主党とでは違いがある。この違いをすり合わせることなく、とにかく「打倒与党」だということで強引に推し進めれば、いざ政権を担ったときに、どちらの方向に進むのかわからず、政権は瓦解するだろう。
この過ちを何度も繰り返してきた小沢氏だが、夢よ再びとばかり、同じ戦略で打倒与党を目指すらしい。国民はこの手にはもう乗ってこない。それが小沢氏には見えていない。国民は馬鹿ではないのだ。
詳しくは次の動画で説明しておりますので、ご覧いただければ幸いです。
岩田 温 大和大学政治経済学部講師
1983年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学大学院修了。専攻は政治哲学。著書に『偽善者の見破り方 リベラル・メディアの「おかしな議論」を斬る』(イースト・プレス)『人種差別から読み解く大東亜戦争』『「リベラル」という病』(彩図社)、『逆説の政治哲学』(ベスト新書)、『平和の敵 偽りの立憲主義』(並木書房)、『流されない読書』(扶桑社)などがある。ブログ『岩田温の備忘録』