ネット上の議論は可能か?BLOGOSコメント欄閉鎖に寄せて

常見 陽平

このブログは、BLOGOS、アゴラというサイトにも配信されている。オピニオン系の記事がたまに転載される。なかでも、BLOGOSというサイトにはコメント機能があり。匿名でのコメントが可能となっている。

このコメント欄は味わい深い。いつも私の記事に対しては「モップ頭」「茶髪豚野郎」「クソパヨク」などというコメントが並ぶ。容姿に関して批判するコメントだらけである。意見交換にはならない。

見落としていたのだが・・・。

12月5日にBLOGOS編集部からコメント欄閉鎖のお知らせがあった。

記事のコメント欄について 12月05日 12:49 BLOGOSでは、2020年1月31日をもって、記事ページのコメント書き込み機能を停止いたします。停止前のコメントは1月31日以降もPC版BLOGOSから閲覧できますが、新規の書き込みやコメントに対する支持、通報などは不可能となります。 また、これに伴い、記事ページではFacebookコメントプラグインを用いてのコメント機能を提供いたします。なお、議論ページについては従来通りご利用いただけます。 ユーザーの皆様にはご不便をおかけしますが、ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。

厳密には、コメント機能が廃止になるわけではなく、Facebookのコメント機能に移行するとのことである。これにより、匿名でのコメントはできなくなる。

なるほど、そうなったか。

これは、ネット黎明期から続く、「匿名・実名」論争が続いていることを示している。さらには、ネット上での議論の難易度が高いことを物語っている。

いまや、Facebookは必ずしも実名というわけではなく、たまにペンネームのアカウントも見かけはする。とはいえ、BLOGOSの現状のように、完全匿名という風にはしにくい。この状態になったときに、どれだけの書き込みがあるか、誰が書き込むのかに私は注目している。

匿名の書き込みでは、前述したとおり、意見ではなく、筆者のパーソナリティーやルックスに関する批判や、誹謗中傷も跋扈してしまう。これらが放置されると運営側の責任も問われかねない。まったくの素人の推測ではあるが、そのようなサイトは掲載責任を問われたり、検索上不利になることもあり得る?

もっとも、匿名の書き込みが悪いわけではない。実名であれば書けないことを書けるというのはメリットの一つではある。

匿名で何かを言わせたら、人々(あくまで匿名で書き込んでいる人たちではあるが)は何を語るのかというのも注目ポイントではある。何より、時代の記録である。たとえ、レベルが低くても。さらには、モノを言うことは権利である。ただし、ヘイト的なこと、意図的なデマを除く。

photoB/写真AC(編集部)

もっとも、今回の件は「ネット上での意見交換」にはコストがかかる可能性があるということを可視化したのではないか。議論を成立させるためにはファシリテーター的な人を立てる必要もあるし、事実の確認や、誹謗中傷コメントの管理もしなければならないからだ。

なお、同サイトのコメント欄では、私のエントリーに対して、「記事と関係ない自撮り写真を載せるな」という批判が殺到した。笑止千万の妄言である。これは私のブログであり、これは表現の一部である。誰が書いているのかを具体化するためでもある。私自身の記録でもある。匿名の声は自撮り写真を自分のブログに載せるという権利するも踏みにじろうとしたのである。

盟友中川淳一郎からは自撮り写真をもっと増やせというアドバイス、エールを頂き、日々精進してきた。有難い。

過激な左系文化人の烈々たる主張でみんなが怖がらないために、私や娘の愛くるしい写真を載せているのである。それを理解できないとは。表現の不自由の連鎖が続いている。

皮肉なことに、私の自撮りをコメント欄で匿名で誹謗中傷してきた人々は、今後はFacebook投稿などでしか批判できなくなった。それはともかく、何より匿名で、有益な意見を書き込んできた人はその機会を失ってしまった。まあ、意見の責任を明確にするためにも、質の悪い意見を排除するためにも実名推奨ということなのだろうが。このように表現の不自由の連鎖が進んでいく。

表現の不自由といえば、私が参加した座談会が掲載されたこの本がすぐに重版に。津田大介氏と表現の不自由展その後の関係者の証言がまるで食い違っているのが味わい深い。事実を知りたいし明らかにするべきではないかな。

私の参加した座談会は、ここで全文読めるので、ご覧いただきたい。

~試し読み~ あいちトリエンナーレ「展示中止」事件(web岩波 たねをまく)

というわけで、20年くらい前から続く議論を我々は引きずっている。そして、権利はいつも乱用する者たちにより壊されるということだ。うむ。

最新作よろしくね。


編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2019年12月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。