株式会社致知出版社から『強運をつくる干支の知恵[増補版]』という本を上梓しました。来週月曜日23日より全国書店にて発売が開始されます。
私共SBIグループでは2000年から毎年1月の最初の出社日に年賀式を行うことにしています。そこで私は今年の年相ということで干支学をもとに30分程度話をしてきました。役職員の中には、うちのグループの総帥は占いが好きなんだとか今年の占いは当たるのかとそういった興味本位で聞いている者達もいると思います。筮竹などを用いた易占が干支を用いて普及したため、わけがわからず易占と混同しているのでしょう。しかし、本来干支学は易占と異なるものです。
干支(えと)の干は「幹」であり、根であります。支は「枝」を表象し、根から生じる枝葉花実です。植物生命の発生から順次変遷し、その終末に至るまでの過程を干は十段階、支は十二段階に約説し、これを組み合わせて六十の範疇にしたものです。ですから干支は植物生命の成長、発展、収縮する変化の過程を分類し、それぞれに対して説明を加えていったものになります。
このように元来、植物の生命の変化を表すのに利用されてきた干支が、次第に人間世界の様々な出来事や時勢の変化についての判断にも適用されてきたと推察されます。したがって、干支学というものは古代からの知恵が次第に集積されていったもので、歴史的、経験的、実証的な意義が深く、干支占いというようなものでは決してないのです。具体的に歴史上の事実に徴して調べてみても普遍的妥当性が見い出せることがわかります。
こんな思いで、毎年の年相を発表してきたのですが、数年前に干支学が学として成立する過程をもっと調べようと思いました。それはちょうど「易」の勉強をし始めた頃でもありました。『論語』の中にも「我に数年を加え、五十にして以て易を学べば、もって大過無かるべし」とあります。また「韋編三絶」という言葉があるように孔子は『易経』を綴じた革紐が何度も切れるぐらい繰り返し読んだと言われています。東洋哲学や人物学の碩学であられ、私が私淑する安岡正篤先生も「易」について次のように言われています。
【易を学ばなければ、自分自身どうなっていたか分からないことを折にふれて感ずることがある。ということは、物心ついてから私が遭遇した、体験してきた環境・時代・国家というものは、それこそ大いなる変易、グレート・チェンジの連続であった。中学時分から真剣になって民族興亡の歴史や哲学を学んで、私なりにいろいろの経論を研究した。しかしその抱負、経論、あるいは信念というものが、その後の昭和の歴史を通じてことごとく裏切られた。その時非常に役に立つのが中国の易の学問であった】
『易経』は殷代より漢代の初め頃まで千数百年にわたり、天地自然と人間世界の相関関係を、英知を尽くしてまとめあげた古代思想の精髄であります。干支学も易学も古代の中国人達の考え出した共通の思想・原理から成っています。ですから、古代中国人達の思索の過程を研究することで一度に両方を体系的に学ぶことが出来ると思い、先賢達の書を渉猟し始めました。そうした勉学により、私は干支学の発達の過程とその深さを改めて認識致しました。
とりわけ東洋史観に関する諸書籍(主として高尾義政氏、鴇田正春氏の著作)にはそれまで得られなかった極めて合理的な説明がなされており、頭が整理されました。本文でも随所で引用したいと考えています。
本書では、干支の原点に遡って由来を述べるとともに、干支の意義を論じ、過去2002年から2019年までの各年のSBIグループ年賀式で干支による年相として私が発表した年相を御紹介したいと思います。そうすれば読者の皆様も干支の本来の機能を理解し大いに活用出来るのではと思います。
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