世界経済フォーラムが発表した2019年度ジェンダーギャップで日本は121位と過去最低のランクまで落ち込みました。「指数は経済、政治、教育、健康の4分野で女性の地位を分析し、総合順位を決めている」(日経)とあります。今年は特に政治部門が不振で前回の110位から大きくランクダウンしたとのことです。
男女格差の問題はセンシティブであり、扱い方を間違えると大炎上しかねないこともありこれに正面から触れるコラムや論説も案外少ないかもしれません。上野千鶴子氏のように女性目線から見た男性優位社会の問題点に触れているものはありますが、男性目線から見たなぜ、男女格差が埋まらないのか、というより学術的な論評はあまりお見掛けしません。
私は北米ですでに28年過ごしています。そしてここバンクーバーの場合、30代-40代の日本人居住者の男女比率は男性25%、女性75%で圧倒的に女性主導の傾向があります。ほかの年層でもその傾向は強くなっています。(なぜ、日本人女性が多い街なのかという点については別の話になるのですが、基本的には女性にとって過ごしやすい環境、ワーホリ制度や国際結婚が進んでいるのに対して男性にとってはビジネス拠点ではない点でしょうか?)
日本人女性が多いこの街でローカルの女性と日本人女性を比べると多少、違いは感じ取れます。それはローカルの女性は性別を超えた強さを感じるのです。ビジネスシーンでも女性が担当者でフロントラインに立つケースは多いのですが、能力が非常に高く、処理もスムーズ、説明も上手でお任せできる、という点があります。(この点は男性よりはるかに優れています。)
ではローカル社会では女性が全面的に進出している中で日本人女性はどうか、というと数の上では極めて少なく、上に立つ人はもっと限られてしまいます。その一つに出産後の社会復帰に一つの理由を見いだせるかもしれません。私の知る限り、ローカルの方は出産後、しばらくすると社会復帰し、出産前以上にたくましく仕事をしています。子供は託児所に朝8時頃預け、夕方6時までに迎えに行くのですが、ご主人と半々で分担、あるいは送り迎えは全面的にご主人というケースは結構あります。つまり、家族間の協業をフル稼働させています。
一方、日本人の母親はどうしても子供と居る時間が多くなり、フルタイムの仕事に戻る人は少ないように見受けられます。これは専門の書籍にも指摘されていたことですが、日本人の子どもは母親とのスキンシップの時間が他国に比べて長いとされます。このあたりの母子の過ごし方の違いが結果として年齢を経たときのキャリアにつながらない可能性はあります。つまり、女性の場合、出産前までの仕事と子供がそこそこの年齢になり手離れしてから社会人に再参入する時間的ギャップが大きすぎてしまうように思えます。
日本ではこの問題について通勤時間や託児所、男性中心社会といった問題提起が多いと思います。しかし、女性が社会進出できるカナダにおいても日本人女性がローカルの女性の方と同様な社会人ライフを行っているか、といえば少ないのが実態であります。
男女平等の仕組みがないといった物理的、制度的問題は日本国内でも含めだいぶ改善されてきていると思いますが、日本人の母性が世界でいう表面的な女性の社会的地位(=政治家の数や役員の数)につながっていない可能性はあると思います。
ではこれは女性の社会進出が世界に比べて遅れていると批判すべきものか、というと必ずしもその一面だけでは言い切れない気がします。そして女性の社会進出を促せば促すほど女性は保守的でいざという時の独り立ちをボトムラインで考え、準備する傾向があるため、男性に頼りにくくなり、結婚しない女性や子供を作らない夫婦を増長させるバイアスもかかってきます。
このあたりは日本人の特性であるかもしれません。一番良いのはご主人がサラリーマンではなく、自営や起業をしていて奥さんが空いた時間にご主人の仕事を手伝うといった形の社会進出はやりやすい例ではないかと思います。日本的でありますが、これだって女性の社会進出という点では重要な意味はあると思います。
日本人女性は子供を放置できない、他人に預けるのはもってのほか、という習慣があることも踏まえないとこの男女格差の問題は簡単に論じられないと思います。本来であれば医学的見地と社会学的見地から日本人女性の特性を科学的、統計的に分析し、その上で日本的解を求めるべきではないでしょうか?
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年12月22日の記事より転載させていただきました。