中田宏チャンネル。今日は「本読もう!」って言っちゃいます。
経済協力開発機構(OECD)が3年おきに実施する、国際的な国際学習到達度調査(PISA)というのがあります。
日本の高校生は世界的に見て、どれくらいのレベルなんでしょう。
グローバル化している世界において、国民全員が世界的なビジネスを行って生きているわけではもちろんありません。しかし、日本の貿易や金融などの経済、あるいは安全保障なども含めた外交や国際政治、これら全て世界の中で生きているわけです。ですから、ほんの一握りの人だけが世界的なレベルにあればいいというものではなく、やはり国民全体が平均的に世界に伍していく力がなければ、国はどんどん落ちぶれてしまいます。その意味ではこういう調査も大事です。
調査は3年に1回行われており、科学的応用力は前回2位から5位、数学的応用力は前回5位から6位と少しだけ落ちていますが、それでも上位です。しかし今回目立ったのは読解力です。読解力は、前々回4位、前回が8位、そして今回が15位ということですから、どんどんと落ち続けているわけです。ちなみに3つのカテゴリーでトップの国は全て中国です。これ実際に各国の高校生にテストを行った厳然たる結果です。日本からは全国約6100人の高校1年生が受験しました。
ではランクが落ちた要因を文部科学省も明確にはわかっていませんが、今回から試験をパソコンで行った為ペーパー試験、すなわち紙に線を引いたりしながら読解していく日本人にはやや苦手だったのではないかと言われています。ただ、気になるのは日本人の高校生の間でも差があった。その差は何かというと、日常的な読書週間です。小説などを月数回以上読む生徒の平均点は読まない生徒より45点高かった。また、新聞を同頻度で読む生徒の平均点も、そうでない生徒より33点高かったので、やはり日常の読書によって差が出ているようです。すなわち、日本の高校生が読書したり新聞を日常的に読んだりすれば、全体の平均点が上がるということですよね。折しも来年の大学入試で導入予定だった国語や数学の記述式問題が見送りになりました。
「正確な採点ができないではないか!」「公平な結果にはならないのではないか!」というような声が多く出ていましたし、ニュースなどではコメンテーターが「人生をかけて、1点を争っているときにこれはない!」というようなコメントをしていました。しかし、私には違和感がありました。アメリカの名門中の名門と呼ばれる大学入試は、確かに基礎学力でも点数が必要です。しかし、合否の決め手となるのは、エッセイと呼ばれる論文などです。ですから、「えっ。あの人が合格?」なんてことも実はあります。しかし、問われるのは大学に入ってからです。本当に入学後によくよくよく勉強しないと卒業できないわけです。新たに導入される大学入試では、一人一人の記述式の答案をじっくり見なければいけません。それをアルバイト学生にまかすということが問題になっていたわけです。ですが、合格発表までしっかり時間をかけてプロがじっくり採点すれば公平な入試になります。
何よりも中身のある授業を行い、教授自身が評価される厳しさが日本の大学には重要だが、日本の大学にはあまりない。
入試にじっくり時間をかけず、大学の授業も変わらず、そして日本社会全体は大学に入ることばかりに拘り、どんどん書く力の水準が落ちている。私はそう思います。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年12月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。