日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告が日本を出国してレバノン入りしていることが分かり、日本の態勢を問題視する声や裁判所と弁護人の責任を問う声があがっている。
仏経済紙「レゼコー」や米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」など複数の欧米メディアは30日、ゴーン被告が日本時間の31日午前6時半すぎにレバノンの首都ベイルートに到着したと報じた。
複数の関係者によると、ゴーン被告は「日本で公正な裁判が受けられると確信できないため出国した」と説明しており、検察側、弁護側とも事前に出国を把握していなかったようだ。東京地裁が保釈の際に示した条件では、海外への渡航は禁止されている。(参照:NHK、時事通信)
またNHKによれば、出入国管理庁にはゴーン被告の日本からの出国記録はなく、別の名前を使って出国した疑いがあるという。
2019年の大晦日に飛び込んできたこのニュースに対しては、各方面から驚きや憤りの声があがっている。
元自衛官で自民党の佐藤正久・参議院議員は、日本とレバノンの間には犯罪者引渡条約がないことを指摘し、簡単に日本からの不法出国を許してしまう日本の態勢を問題視。
【ゴーン被告、レバノンに出国か 起訴され保釈中―欧米メディア 】
事実なら出国ではなく、不法出国、逃亡であり、それだけで犯罪。某国の国の支援があったのか?しかし、簡単に日本から不法出国を許してしまう日本の態勢も大問題。かつ日本とレバノンは犯罪者引渡条約がない https://t.co/qcyp2EOxYY— 佐藤正久 (@SatoMasahisa) December 30, 2019
投資家のH.S. Kim氏からは「裁判所と被告弁護人の責任」を問う声があがったが、
東京大学教授の法学者・玉井克哉氏は「出入国管理の問題」と指摘。
「裁判所と被告弁護人の責任」とか言ってるツイートを発見したが、出入国管理の問題だろう。あんな特徴のある顔の人を見逃したとすればチェック体制の不備、他の方法で逃亡したのなら制度的な問題。誰かを叩いて溜飲を下げて終わり、問題はそのまま、それどころか悪化という悪弊、今年限りにすべきだ。
— 玉井克哉(Katsuya TAMAI) (@tamai1961) December 31, 2019
ジャーナリストの門田隆将氏は、「生涯を刑務所で過ごす可能性が強かっただけに決死の脱出だったのだろう」「日本の恥である」と厳しく糾弾した。
弁護人がパスポートを預かる事が保釈条件だったゴーン被告が日本から脱出し、レバノンに逃亡。生涯を刑務所で過ごす可能性が強かっただけに決死の脱出だったのだろう。プライベートジェット機をはじめ様々な逃避行の手段があったのに日本はそれを阻止できず。日本の恥である。https://t.co/R5uZzCUDLE
— 門田隆将 (@KadotaRyusho) December 31, 2019
一方、弁護士の立場からは弁護団や裁判官に同情する声や、日本の刑事司法における身体拘束判断が厳しくなるという予想も。
折角、苦労して早期保釈を実現したのに…。同業者として弁護団には同情を禁じ得ない。外国籍の被告人についての保釈はますます厳しくなるでしょうね。
— 山口貴士 aka無駄に感じが悪いヤマベン (@otakulawyer) December 30, 2019
ゴーン氏を保釈した裁判官に対する批判が高まると思うので予め言っておくけど、保釈した裁判官に責任はない。法律上、逃亡の可能性が高いことは保釈を認めない理由とはされていないし、被告人の逃亡リスクは推定無罪と適正手続きの保障を維持するためには、ある程度仕方がないと割りきるしかない。
— 山口貴士 aka無駄に感じが悪いヤマベン (@otakulawyer) December 31, 2019
ゴーン氏についてヨーロッパを中心に不正な逃亡ではなく日本の遅れた刑事司法からの正当な脱出としての論陣が張られ、他方で日本の身体拘束判断は厳しくなり、ますます世界の刑事司法から乖離していく、というのが中期予想。
— 野田隼人 Atty. NODA Hayato (@nodahayato) December 31, 2019
いずれにせよ、ゴーン被告がどうやって出国したのかが最大の難問として関心を集めている。
プライベートジェットと言っても、出国手続きはいるでしょう?変装してもたちまちバレてしまう彼の面立ちに気づかないなんてありうる?いったいどうやって…?ゴーン被告、無断出国か レバノンに到着と報道、保釈中(共同通信) https://t.co/MDIlM3Il89
— Shoko Egawa (@amneris84) December 31, 2019
一番の難問はどうやって出国したかで、レバノンが公用旅券を出したというのが一番ありそうな話だけれど、それでも出国で相当揉めるはず。そこがクリアできてしまっているので、今月上旬に外務大臣がベイルートを訪問していることとの関連について憶測が飛んでいる。
— 野田隼人 Atty. NODA Hayato (@nodahayato) December 31, 2019
またNHKが31日12時41分に伝えた速報によれば、ゴーン被告は米国の広報担当者を通じて「私はレバノンにいる」と声明を発表した。
「私はいまレバノンにいます。もはや私は有罪が前提とされ、差別がまん延し、基本的な人権が無視されている不正な日本の司法制度の人質ではなくなります」
「私は不公正と政治的迫害から逃れました。ようやくメディアと自由にコミュニケーションできるようになりました」