レバノン逃亡でゴーン被告は墓穴を掘ったか

linkedineditors/flickr:編集部

レバノンを国家ぐるみで国際的逃亡犯罪者を匿う国だなどと非難することはしばらく止めておこうと思っている。

海外逃亡したゴーン被告をレバノンの国民が一様に英雄視しているというわけではなさそうだ。大統領や外相は今のところゴーン被告の庇護者を買って出ているようだが、レバノンの政情は決して安定していないようだから、いつ何が起きるか分からない。

大金持ちのゴーン被告が20数億円もの費用を掛けて今回の大脱走、日本からの逃亡劇を演じた、などと聞いて、それほど豊かではないと思われるレバノンのいわゆる庶民層の方々はどう思われるだろうか。

金持ちは金の力で正義を簡単にねじ曲げてしまうのか、罪に問われているのに金持ちは金の力で罰を免れることが出来るのか、ゴーンという人は1000億円を超える資産を有していると言われる大金持ちだそうだが、それだけの金をいつ、どこから、どのような方法で獲得したのか、などといったことにレバノンの国民の方々関心を持つようになれば、うーん、ゴーンという人は何か胡散臭いだなあ、ということになるかも知れない。

かつては英雄視されたことがあるのかも知れないが、国際社会から指名手配されている犯罪者だ、などという認識が広がったら、今は庇護者の役割をしている人たちがいつ掌を返すかも知れない。

少なくともゴーン被告は、裁判が始まる前に日本の裁判手続きから違法な手段で逃げた犯罪者である。

日本でも有数の刑事弁護人と言われていたこともある真面目な日本の弁護士との信頼関係や裁判所との約束を破って海外に逃亡した裁判中の犯罪者だということになると、ゴーン被告から相当の利益や便益を得た極く一部の人を除いて、ゴーン被告を英雄視する人は大分少なくなるのではないか。

トルコでは既にゴーン被告の逃亡に手を貸した人たちが身柄を拘束されたようである。
レバノンでも一部の弁護士の方々がゴーン被告の告発に動き始めたようである。

ゴーン被告が違法な手段で海外逃亡しなければゴーン被告の応援団に回っていた人たちも、少しずつ物の見方を変えてきているように思われる。

逃げたのが反って拙かった、ということになるかも知れない。

日本には、天網恢々疎にして漏らさず、という言葉がある。

逃がしたのは大失態だが、ひょっとしたらゴーン被告は墓穴を掘ったのかも知れないぞ。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2020年1月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。