豊洲市場が日本を救う!令和初のマグロ初競りは1億9320万円

川松 真一朗

東京都議会議員の川松真一朗(墨田区選出・都議会自民党最年少)です。

2020年は史上2位の高値

1月5日は豊洲市場初競りの日でした。午前5時頃から競りが始まり、注目された青森県大間産のマグロは史上2位の高値となる1億9320万円で落札されました。276キロのマグロを競り落としたのは昨年と同じ「すしざんまい」チェーンの木村社長でした。

NHKニュースより:編集部

よく間違える人も多いのですが、このマグロ初セリで出てくる高値は「1キロあたり」の高値で今年は約70万円だったのです。1キロ当たりは劣るんだけど、落札金額が高くなるケースもあります。それだけ大きなマグロということになるのでしょうが、目利きから見て質は悪かったということになるでしょう。故に質が問われるので1キロ当たりで評価の高い方が「良いマグロ」になります。

私はかつて小池都政下で豊洲市場移転が中断された際に、豊洲市場移転を求めて喧々諤々の議論をしてきました。当時、移転問題の委員としてメディアや各イベントで産地の為にも素晴らしい市場が必要だと訴えてきたのでした。つまり、豊洲市場は取引の場であり、落札金額は産地や漁師へ支払うことになります。

近年の大間マグロ戦争は1億円を超えるちょっとした騒動になっていますが、東京の市場には日本の中心らしく目利きのあるプロが集結します。その人達が、「良し」「悪し」を判断し、値をつけるわけですから「良い」ものを出荷している産地には「高値」の恩恵に授かれる。つまり、更に産地が「頑張ろう」というモチベーションアップに繋がるのです。

首都にある市場として

ですので、日本で一番高値がつく豊洲市場に大間のマグロに限らず、全国の産地から「良い」ものが沢山集まって、競りが活況となれば、文字通り「日本の経済が回る」事になります。だからこそ、私は東京都が整備する市場だけど、豊洲は首都東京に市場、日本の市場なんだという主張を繰り返してきたのでした。

市場移転延期でツケがまだ残る

ところが、移転延期のゴタゴタで、まずもって豊洲の悪評が全国へ広がりました。結果として、地下ピットなども問題はなかったのですが、この悪評が尾を引いて、まだまだ全国の産地から認められていないのが現実です。

そうすると、この豊洲にはモノを出荷しないという漁師や漁港もゼロではないのです。命がけで仕事をして魂込めた出荷品を「評判も悪い」ところには送れないという心情は理解できます。ですので、小池知事には全国の産地を歩いて、豊洲にモノを出してくれるようお願いして欲しいと要望してきました。

また、もう1つ問題があります。豊洲市場は完全閉鎖型で運用ルールの厳格化を目指す市場として準備されてきました。本来の移転が近づけば、築地ではないがしろにされていた面も運用ルールを今一度、市場関係者に徹底し、研修なども重ねた上で豊洲に移るという方針でした。

ところが、市場移転の延期が突如「市場を移転する」となったために、バタバタの中で豊洲に移転することになったのです。研修の不徹底どころか、当初は移転賛成派も当時の過熱する報道を受けて「築地残留派」と転じた方も含めて、東京都と市場関係者の信頼関係が壊れた中での移転となり、運用はグチャグチャになってしまったのです。

そのことで、一部には未だに豊洲市場不安説が残っており、「やっぱり豊洲はダメではないか」と移転推進をした私も糾弾される事がしばしばです。

産地へも取り分

昨日、過去2位の高値で落札されたわけですが、ではこの1億9320万円はどこに分配されるのかという事に触れておきます。

まず、市場は競りをする場所であり、ここには競りを行う人がいます。これを荷受業者といい卸売業者です。この業者の手数料は5.5%です。これは築地の頃から変わっていないのです。ここに今回であれば青森県漁連手数料、漁師の地元である大間漁港手数料などが引かれて、89%が漁師の取り分とされています。これに所得税はかかります。

とはいえ、分かるように県漁連にも漁港にもお金が入る仕組みになっています。大間のように1度の取引き単価が高くなくとも、良いモノを多く出荷すれば、その分、取り分は上乗せされていくのです。

でも、今では「産地直送」「市場外流通」も増えてきて、「市場の未来は暗い」という論を張る方もいます。これがもし市場外流通で取引となれば「競る相手」がいないわけですから、底値は固いですが価格は上がりませんよね。漁師、漁港などがどう判断するかですが、豊洲で夢を広げて欲しいなと私は思うのです。

適正価格を誰もが認め合う社会を

同時に、初競りのようなご祝儀相場は別としても、「良いもの」は「良い」と評価されるプロの世界。同時に私達消費者も、みながwinwinになるように価値観を考え直す必要もあります。ネット通販などの発展により「値段が安い」ものは一昔前とは比べ物にならない程、どこにでも目にします。

しかし、それを目の見える形で「生産者」「流通過程」が見えて、本当に良いものが、どんな値段なのかを判断するリテラシーも問われる時なのではないでしょうか。しっかりと「良いモノ」には適正価格がつけば、生産現場にもしっかりとお金が回り、一部の人だけが儲かる仕組みを打破し、努力した人に利益が回る体制を取り戻せると考えています。

今年は今まで以上に豊洲市場に目を向けて、豊洲市場も「日本活性化の1つ」という視点で、より動いていこうと考える新春です。

川松 真一朗  東京都議会議員(墨田区選出、自由民主党)
1980年生まれ。墨田区立両国小中、都立両国高、日本大学を経てテレビ朝日にアナウンサーとして入社。スポーツ番組等を担当。2011年、テレビ朝日を退社し、2013年都議選で初当選(現在2期目)。オフィシャルサイトTwitter「@kawamatsushin16」