明けまして御目出度う御座います。
それでは、早速吉例に従い、今年(令和二年)の年相を干支でみましょう。
今年は十干(じっかん)と十二支(じゅうにし)の組み合わせで言うと「庚子(こうし・かのえね)ということになります。
先ず、古代中国の自然哲学である陰陽五行説で見ましょう。五行説では、十干と十二支の漢字にはそれぞれに五行(木、火、土、金、水)という五つの性質のどれかがあるとされています。庚子の場合、庚(十干の七番目)は金性の陽、子(十二支の一番手)は水性の陽であり、「相生」の関係になります。相生とは、木、火、土、金、水と順送りで相手を生み出して行く関係を言います。
この庚子のケースでは、「金生水(ごんしょうすい)」と言い、金属の表面には凝結により水が生じると考えるわけです。相生は「相性」の語源であり、相性の良い組み合わせであり、最近の相生関係は2014年の「甲午(きのえうま・こうご)」まで遡ります。つまり、六年ぶりで相性の良い干支の年がきたのです。
相性が良いという事は、良い年になる可能性が大きいという事です。
この事を頭に置き、次に庚子が具体的にどんな年になるのか、庚と子のそれぞれの字義を見て考察しましょう。
先ず、「庚」の象形文字は杵(きね)を両手で持ち、搗(つ)いている形です。従って、庚の原義は、杵を執って臼で穀物を搗くことと考えられます。穀物を搗くには、繰り返し搗き続けなければなりません。そこに継続の意味が生じます。搗けば穀物は変化するから更(かわ)る、更新という意も生まれてきます。
後漢の班固の著した『白虎通義』には「庚は物更(あらたま)るなり」とあります。『説文解字』にあるように「庚々」と言えば、穀物の実(みの)る様を言い、明瞭な変化の相です。
また『礼記』の檀弓(だんぐう)下では、庚を償(つぐな)うという意味に用いています。
このように「庚」には①継承・継続する。②更(かわ)る。③償う。の三義があります。
「子」の字義に移りましょう。「子」は十二支の最初です。「子」は「了」と「一」との組み合わせで、「終わり」と「始まり」、つまり始末という意味です。物事が始まるには終わりがなくてはならないのです。
また、中国の『漢書律暦志』によると、「子は孳萌(じぼう)なり」とあり、植物の芽が次々と出始めるあり様を示し、新しい生命が種子の中に創造されつつあるとしています。
『説文解字』には「子」は「陽気動き、万物滋入す」とあり、陰気が極まって陽に転じ、原点に返って万物が盛んとなり始めるということです。易でいう「一陽来復」と呼ばれる現象です。
以上、「子」は陽気の到来による①新たな局面の展開と②物事の増殖を意味していると言えましょう。
こうした解釈は「子」の甲骨文字が子供の頭髪がどんどん増えて伸びる様子の象形文字であることに由来していると思われます。
前記の両方の字義をまとめると庚子の年には、先ず新たな局面が展開するという認識を持ち、継続すべきことと刷新すべきことを峻別することが必要です。そして、因習を打破し、諸々の汚れを払い浄めて償(つぐな)うとともに引き継ぐものは断絶することなく、思い切って新しい局面や環境に対応すべく更新し、進化させて行かなければならないという象であります。
そうすることで動き始めた陽気により、新たな芽吹きと繁栄が始まるということです。そもそも庚子は相性の良い相生関係にある組み合わせですから。
史実の歴表に徴してみますと、前記してきた庚子の年相がよく御理解いただけると思います。60年前(1960年)の庚子の年の象徴的な出来事を列挙しましょう。
第一は、日米安保条約の改定です。当時、大学生や高校生までが街頭デモに多数参加し、社会は大揺れでした。反対を押し切って安保の強行採決をした岸内閣が混乱の責任を取って総辞職しました。この日米安保条約がなければ、北朝鮮や中国、ロシアの核の脅威に処する術がないことを考えると当時の岸内閣の英断に感謝すべきではないでしょうか。これに対して異論もあるかもしれませんが、少なくとも60年間、日本は戦争に巻き込まれずに経済的繁栄を謳歌することが出来たことは紛れもない事実なんですから。
第二には、岸総理の退陣を受けた池田内閣の誕生です。池田首相と言えば、何と言っても「所得倍増計画」です。10年間で国民所得を倍にするという計画です。これも後から振り返ると、計画を大きく超える成果を上げました。倍増ですから「子」の増殖に通じるものがありますね。
余談ですが、子年には首相交代が多くありました。この岸さんから池田さんも一例ですが、その他2008年には福田康夫さんから麻生さんへ、1996年には村山首相が退陣し、橋本龍太郎さんへの交代がありました。今年もありそうな雰囲気ですね。ずっと遡ると、420年前の庚子の年つまり1600年には、天下分け目の関ヶ原の合戦があり、徳川家康が豊臣家を滅ぼし天下を取りました。
第三は、カラー放送が開始され、松下電器がカラーテレビ第一号機を価格50万円で発売。1950年代の三種の神器(白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫)が普及し、繁栄の象徴とも言える新たな三種の神器(カラーテレビ、クーラー、カー)の時代に入っていき、これが日本のさらなる高度成長をもたらしていきました。消費財ということで言えば、この年日本の大衆向け煙草の代表的銘柄であるハイライトが発売され二週間で四億本以上が売れました。
第四は1960年は「アフリカの年」とも言われました。この年にフランスからの13ヶ国を含め合計17もの国が独立しました。アフリカの人口は、特にこの40年はねずみ算的に増えています。まだ十分な経済成長を伴っていませんが今後は急速に変化していくでしょう。
さて、こうした庚子の年相を踏まえ、我々SBIグループの全役職員には、次の四点を肝に銘じていただきたい。
第一に、グループ挙げて国家目標でもある地方創生に貢献していくためこれまで三年間にわたるビジョンと戦略を選択的に継続し、進化させていくことに全力を尽くして戴きたい。
第二、今年はこれまで以上に長期的視点に立ち、今後の飛躍的発展に向けた周到な計画と準備をし大胆にチャレンジする年としたい。
第三に、米軍がイランの国家的英雄であるイスラム革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害したことで日本の株式市場も出鼻をくじかれた状況ですが、干支にちなんだ株式相場の格言にあるように「子は繁栄」で持ち直すと思います。ただ、我々はオリンピック・パラリンピックの経済効果に浮かれることなく常にねずみのような鋭敏な勘とひらめきを醸成するよう常日頃から心掛けることが肝要です。「ねずみは沈む船を去る」とか「火事の前にはねずみがいなくなる」とか昔から言いますが我々もねずみのように危機を未然に察知し、難局を回避しなければなりません。
最後に、今年、金融業界は再編の嵐が吹き荒れるでしょう。我々SBIグループはこの嵐をチャンスとして捉え、確固たる戦略を持ち庚子の年に相応しい大飛躍を遂げようではありませんか。
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