「第3次世界大戦」などという極めて物騒なキーワードがネット上を飛びかかっています。
言っときますが、そんなことになったら我々の生活や命はどうなるかわかりませんからね。
しかしながら、国連のグテレス事務総長が「世界は今、世紀最大の危機にある」と言った通り、我々はかなり深刻な事態の中で生きています。国連事務総長にそう言わせた引き金は1月3日、アメリカ軍がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を1月3日の空爆で殺害です。直接の引き金はそうですが、ここに至るまでも複雑な中東の情勢があった上で様々な出来事が起きてきたというプロセスが当然あります。とにかく中東は複雑です。
イスラム教のスンニ派、シーア派という宗派争いがあり、テロ行為などを行っている、イラクとシリアにまたがる地域で活動するイスラーム過激派組織「イスラム国(IS)」というような過激派組織もあります。
イランはシーア派でアメリカと関係が近い。サウジアラビアはスンニ派、そしてイラクはシーア派とスンニ派が混在をしています。
このイラクでイランの司令官が殺害されたので、イラク国内も大反発をしています。
イラン・イラクという地理関係はこうです。
イラクは1979年から2003年までイラク大統領だったサダムフセイン政権が崩壊をしてからアメリカ軍が駐留しています。そして、イラクの人口の6割はシーア派、議会の多数もシーア派ということで、今回、イラク議会は5日、駐留している外国軍の撤退を政府に求める決議を採択しました。
この外国軍とはアメリカ軍を中心として対テロ有志連合を指しており、もしアメリカ軍がいなくなれば、良くも悪くもアメリカが重しになってきたので中東のバランスはが壊れるわけです。そうなれば過激派ISがどんどん台頭してくるというようなことにもなりかねません。
そもそもイランが核開発すなわち核兵器を作ることに周辺諸国が大反発をしてきた経緯があります。一応、2015年7月にイランが核開発縮小で米英仏独露中と最終合意しましたが、2018年5月にトランプ政権が核合意離脱と制裁再開方針を表明しました。このアメリカの制裁に対してイランも反発して核合意の違反行為をいくつも繰り返してきました。
イランの違反行為
2019年7月1日 低濃縮ウランの貯蔵量が300kgの制限を超過
2019年7月8日 ウラン濃縮レベルを3.67%から4.5%まで引き揚げ開始
2019年9月6日 高性能の遠心分離期の設置開始
2019年11月5日 遠心分離期の再稼働を表明
そして今回、イランは2020年1月5日にウラン濃縮活動を無制限に進める方針を表明しました。
そもそも米軍がイラクからいなくなれば、先ほど言ったISだけではなくイスラエルがイランに核を持たせないために先制攻撃することもあり得ます。そうなればサウジアラビアも自分たちの核開発をするということになるんでしょう。
今この瞬間も中東全域やホルムズ海峡では緊張度がどんどん増しています。ですから原油価格も上がります。原油価格が上がれば、経済も、株価も、そして当然我々日本もガタガタです。
ただでさえ複雑な環境なのにそこに今言ったこと以上の様々なシナリオが思い浮かびます。
今現状は、イランは国民的英雄のソレイマニ司令官を追悼する服務期間で、その区切りが一応40日後です。その40日後には2月11日のイランの『革命記念日』もあります。イランはアメリカにどんな対抗措置を取るのか、考えれば考えるほど気が狂うほど大変な事態になっています。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年1月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。