新成人も介護は他人事でない。知ってほしいヤングケアラーの存在

奥村 シンゴ

1月13日は成人の日。
20歳を迎えられた皆様、おめでとうございます。

総務省統計局によると、今年は122万人の新成人が誕生し前年と比較すると3万人の減少。男女別では、男性が63万人、女性が59万人と男性が4万人多くなっています。

そんな新成人の皆様方へぜひヤングケアラーの存在を知ってほしいのです。

ヤングケアラーとは、10代~30代位までの親、兄弟、親以外(祖母、祖父など)を介護している人たちの総称です。

実は、私自身が「30代前半から男性で祖母の在宅介護」をして7年目が経過するヤングケアラーの一人です。
そこで、今回はヤングケアラー対策を体験談を踏まえ、主に3つ書かせていただきますので是非参考にして下さい。

若くして突然祖父母を介護することも…(FineGraphics/写真AC)

いざという時に協力しあえる親子関係を築いておく

2017年の「総務省の就業構造調査」によれば、ヤングケアラーの数は15歳~29歳で21万100人、39歳までが54万100人に達しています。前回2012年の同様の調査では、15歳~29歳のヤングケアラーの数が17万7600人でしたので、5年間で3万2500人増加しています。

成人を迎えた皆さん他人事ではありません、いつヤングケアラーになってもないのです。

まず、ヤングケアラーになる原因は「複雑な家庭環境」にあると考えます。

私の家族は母親、弟、妹、祖母と4人いるのですが、母親は甲状腺がん、拒食症、脳梗塞、大腸がんと度々大病を発症。

母親は祖母の介護が必要になった7年前に脳梗塞を発症し、3年後に大腸がん、そして何より祖母と相性が合いませんでした。

弟と妹は結婚し子供がいますし、祖母にあまりいい思い出がありません。

というのも、祖母は私ばかりを大事にしてきたという印象が強いのです。

例えば、兄弟喧嘩をした時、祖母は弟と妹ばかりを叱り、「シンゴくんの悪い事言ったら承知しないからね」と口癖のように言っていました。

弟と妹と年に何度か出会うとたまに「小さい頃、家に帰りたくなくて毎日外へ出てたな、犬と遊んだり、動物捕まえたりなあ」と話します。

ですから、いざ祖母が認知症になり介護が必要になっても協力体制が整いませんでした。

実際、次のような調査結果もあります。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が実施した「ヤングケアラーの実態に関する調査研究 報告書」によれば、「ヤングケアラーになった理由は「年下のきょうだいがいるため」が58.8%と最も高く、次いで「ひとり親家庭であるため」(42.5%)、「親が家事をしない状況のため」(38.7%)、「親の病気・障がい・精神疾患や入院のため」(36.4%)となっています。43ページ

いざ親や親以外の身内に介護が必要になった時、親子全員が同じ方向を向いているか日々の生活の中で確認して下さい。

Pixabay

キーパーソンを明確に決めておかないと混乱する

私の場合、祖母が認知症を発症したと同時期に母親が脳梗塞で倒れたので、一気にダブル介護が必要になりました。

母親や祖母が病気になった時、在宅介護か施設か、身の回りの世話、お金のキーパーソンを全く決めていませんでした。

家族同士で集まりましたが、「どこに相談したらいいん?」、「お母さんとばあちゃん2人も誰が金払うん?」、「在宅無理やって。仕事あるし、家庭あるし」と混乱しているだけでした。

結局、兄弟で唯一独身だったのと、祖母にかわいがってお世話になったので少しでも孝行できればと思い介護しました。

成人を迎えた皆様のお父さんやお母さんはおそらく40代、50代辺りで元気な方が多いと思いますが、下記の①~③は特に今からでも話し合っても遅くありません。

  1. 在宅介護か施設か
  2. 在宅・施設いずれにしてもお金は誰が払うか
  3. 在宅介護なら誰がいつ区分して面倒をみるのか
  4. 施設介護なら誰が面会、緊急対応、お金を払うか

介護休暇や介護制度が充実した会社選びも選択肢の一つ

私が在宅介護をスタートした7年前は介護休暇や介護制度は充実していませんでしたので、介護者で協力者がいないと真っ先に介護離職をせざるおえない状況でした。

ですが、近年国や企業は若者介護者に対し捉え方が少しずつですが様変わりしてきた印象があります。

厚生労働省は育児・介護休業法の施行規則を改正し、2021年1月1日から導入します。これにより、介護休暇が「1日」、「半日」単位で4時間以下の労働時間は除外されましたが、2021年1月1日から「時間」単位で取得可能となります。

4時間以下の労働時間の除外の規定項目が削除されます。

参照:インターネット版官報「厚生労働省令第八十九号」

介護休暇が「時間」単位で短時間就業者も取得できるようになることで、若くして身内を介護する人たちの手助けになります。

一般企業でも、NECは90年代から介護支援に力を入れ、現在は通算1年まで何度でも休職が可能です。花王は2008年から介護支援を積極的に行い、最長で1年の休暇が取れるようになっています。エステムは介護がスタートして終了するまで6時間の短時間勤務を可能にしました。

その他、出社しなくても仕事ができるテレワークや社員自身が1日の始業と終業時刻を決めて仕事をするフレックスタイム制も普及してきました。

甚だ簡単ではありますが、主に3つのヤングケアラー対策を紹介しました。

新成人になった今日を機に是非考えてみて下さい。

奥村 シンゴ フリーライター
大学卒業後、大手上場一部企業で営業や顧客対応などの業務を経験し、32歳から家族の介護で離職。在宅介護と並行してフリーライターとして活動し、テレビ、介護、メディアのテーマを中心に各種ネットメディアに寄稿。テレビ・ネット番組や企業のリサーチ、マーケティングなども担当している。ほんまやで~新聞