C-2は開発&調達コストが高騰して、しかも維持コストはF-35Aに匹敵する高価なものになっています。このため調達数か30機から25機に減らされ、さらに22機まで減らされています。しかもペイロードは26トンまで減っています。それは機体(特に後部)の強度が不十分で補強を行ったこと、それもあってだろうと思いますが、重心が後部にあってバランスを取るために約1トンの鉄板を機首に搭載してバランスをとっています。
更に申せば、舗装滑走路でしか運用できない「お嬢様輸送機」です。
つまり、PKOなどで未舗装の滑走路では運用できない。また戦時にダメージを受けて応急処置をした飛行場や、震災などで被災した空港にも降りられません。今後さらに減らされる可能性もあるでしょう。電子戦機などの派生型も財務省は認めないでしょう。
ところが空幕にはC-2以外の輸送機調達の予定がない。C-130Hは「海原天皇」時代に導入されていい加減くたびれていますが、近代化や更新の予定はない。他国ではこのクラスの機体を特殊部隊用にも使用していますが、それもない。
またC-130Hで給油機能があるのは4機だけで、それは空自の救難ヘリであるUH-60Jようで、例えばオスプレイ(将来的にはF-35B)に給油するには数が足りません。
そしてペイロード8トンのC-1はドンドン退役していきます。それは小口輸送ができないということです。C-2を使うのは軽ワゴンで済む輸送に、20フィートのコンテナトレーラーを使うようなものです。コストが高い上に、2000メートル級の滑走路でないと運用できない。空挺部隊でも空自の輸送機の手配がつかずに、空挺降下の訓練に支障を来しているようです。
16式機動戦闘車や19式自走榴弾砲をたった22機のC-2で輸送するなどイリュージョンです。車体に、弾薬車、人員、弾薬などを含めれば一両運ぶのに2機が必要でしょう。有事には弾薬や人員、食料を優先されるでしょうから、後回しになります。机上の空論で装備を調達するのは止めてほしいものです。そもそも空自と陸自の間ではどのような運用をするかという話をしておりません。ドイツ軍はA400だけでも50機を導入する予定です。
極論をいえば、C-2よりも北朝鮮の特殊部隊も使っているアントノフAn2(初飛行1947年)あたりを調達する方がよほど役に立つでしょう。An2は全長:12.40m、全幅:18.2m(上翼)、14.2m(下翼)、高さ:4.10m、機体重量:3.3t、最大離陸重量:5.5t、最大速度:253km/h、巡航速度:185km/h(50km/hでも飛行可能)、乗員:1-2名、乗客:12名、エンジン:シュベツォフ ASh-62空冷9気筒レシプロエンジン×1、出力:1,000馬力、最大上昇高度:4,500m、航続距離:845km、離陸距離は150m、着陸距離は170mです。当然ながら不整地でも運用できます。これを現在の技術で作れば更に高性能の機体になるでしょう。
災害時の派遣には極めて有用な機体です。その気になればいずも級のDDHでも発着艦も可能でしょう。そこまで極端ではなくても例えばM28軽輸送機などがあります。M28は双発ターボプロップで貨物搭載量は2.3トン、搭乗人員19名。胴体後部に左右に開く貨物扉を持ち、空挺降下も可能です。
また短距離離着陸性能(STOL性)に優れ離陸距離は440m、着陸距離は330mで、頑丈な機体構造と相まって他機種の運航が難しい飛行場、簡易滑走路からでも運用が可能です。通常の小口輸送、空挺降下の訓練、特殊部隊、災害派遣などでこのような小型輸送機は大変有用なはずです。
空自は列国に比べて空輸能力が貧弱でもあります。空自はC-27クラスの機体や、給油機、含めて輸送機のポートフォリオを見直すべきです。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2020年1月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。