オーストラリアの山火事の原因は地球温暖化か

池田 信夫

オーストラリアで起こっている大規模な山火事が、日本でも話題になっている。これを気候変動と結びつけ、「地球が温暖化すると山火事が増える」という話が多いが、そもそもオーストラリアの山火事は増えていない。

ビョルン・ロンボルグのツイッターより

この図でもわかるように、オーストラリアでは毎年、大規模な山火事が起こっており、5000万ヘクタール近く焼失した年もある。今シーズンは1000万ヘクタール余りで、最近では平均的な規模である。

山火事というありふれた事件が世界的なニュースになるのは、これが地球温暖化の証拠だと思われているからだが、自然発火で山火事が起こることはほとんどない。出火原因の85%は人為的なものである。火事の起こる山間部には人がほとんど住んでいないので間伐が行われず、延焼しやすい。

ニューサウスウェールズ州の火災(2019年12月撮影:Wikipedia)

延焼が大規模になった原因は、オーストラリアの高温と乾燥である。昨年オーストラリアの気温は観測史上最高になって最高46℃を記録し、降水量は平年を34%も下回った。この原因は、インド洋ダイポールモード現象と呼ばれる海水温が変動して干ばつが起こる現象である。

片山由紀子氏による

こういう異常気象は増えているが、被害は人的要因のほうがはるかに大きい。オーストラリアでも昔に比べて森林の管理が行き届いたため、最初の図のように火災の規模は大きくなっていない。これほど大規模な山火事でも、死者は30人足らずだ。最大の犠牲者は、コアラなどの野生動物だろう。

異常気象は地球温暖化で増えると予想されているが、それを減らすには莫大なコストと長い時間がかかる。山火事を防ぐには、森林を管理して延焼を防ぐなどのインフラ整備をすることが賢明な公的投資である。