中国での新型コロナウイルスによる肺炎の蔓延は相当な規模になろうとしている。中国政府はおととい(25日)、海外旅行の団体客を対象に渡航を禁止する措置に乗り出したが、昨日(26日)夜の時点で、日本国内で4人目の感染者が確認されるなど、すでに入国した人の潜伏状態も懸念される。
去る1月20日、私はTwitterで「日本を含む3カ国で患者が出ているのに、中国で患者数200人であるわけがない。」と書き、成田空港に近い佐倉市民に警鐘を鳴らした。
この時点でも、すでに日本、韓国、タイで合計4名の患者が発見されていた。そんな状況で、発症の地である中国で、当時の報道のとおり患者数がたったの200人と考えるのは、素人でもあり得ないと容易に想像できた。
事実、私のあげたTwitterに対する市民の方からのリプライで、日本の判断や対応を「手ぬるい」と断じるコメントもついた。
そして、春節を迎えた今、日本では中国からの人の流れはすでに抑えようがない。
他方、フィリピンで感染拡大防止を理由に中国人観光客460人余を送還した、とするニュース(参照:NHKニュース)や
北朝鮮では本ウイルス対策で、22日までに外国人観光客の受け入れを中止した、などとしたニュースが飛び交っている(参照:NHKニュース)。
対応は各国の色が出た形だが、ニュースを見る限り日本の「水際作戦」や、万一パンデミックとなったときの「受け入れ態勢の準備」が、我々国民にとって満足できる程度になされ、かつ情報開示されているか言うと、甚だ疑問が残る。陣頭指揮をとっている人物は、厚生労働大臣だろうか。
上昌広・医療ガバナンス研究所理事長が東洋経済オンラインに寄せた記事では、「2009年の新型インフルエンザ流行でも、空港検疫で感染者を1人見つけるのに、14人の感染者を見逃していたと推計されている」と指摘している。当時と今とで、検疫の精度が劇的に向上したとも思えない。 今後、日本で蔓延させないための方策が、よりしっかり打ち出されることを期待したい。
中国の保健当局の専門家によると、潜伏期間は平均7日前後で、ばらつきは2日から12日程度のようだ(参照:NHKニュース)。
あまりあおるようなことは言いたくないが、もしある程度裕福な中国人が、何らかの理由で自分が罹患している可能性が高いと考えたとする。そんな折、春節で長期の休みに入った。患者を隔離・放置しかねない中国で治療を受ける可能性があるとしたら、発症する前に国外へ逃亡しようと考えないだろうか?そしてその先は、医療環境が整った国を選ぶはずだ。さらに、うまくやれば医療費がタダ同然になるとすれば、目指す国はおのずと絞り込まれる。
日本の保険制度の「抜け穴」は放置されているのか?
産経新聞論説副委員長の佐々木類氏が昨日、「外国人に“食い物”にされる医療制度 400万円の医療費が8万円…日本の医療に“悪乗り”する外国人たち」という署名記事を書いている。
記事では、日本の医療制度に悪乗りする外国人の実態が書かれ、高額な医療を安く受けるために来日する外国人が後を絶たない、とある。
さらに一部を抜粋すると
「医療保険制度は、われわれ日本人が毎月、保険料を支払うことで成り立っている。ところが、保険料など払ったことのない外国人が、法の抜け穴をくぐり、甘い汁を吸っているのだ。
(中略)
例えば、中国語WEBサイトには「中国人でも日本の医療保険を利用できる」と宣伝するものが林立している。「『来日後に病気になった』と言えば保険で治療は受けられる」「来日目的が治療であることを隠し続けることが大切」などと悪知恵のオンパレードだ。」
とある。このような情報は、例えば2018年7月にNHKのクローズアップ現代にも取り上げられている。
冷静になるべき時だ
間違えてはいけないのは、日本に来日している中国人の方々のほぼ全員が、通常の入国者であるという点だ。また、仮に日本に来た後新型コロナウイルスによる肺炎を発症された方がいたとしても、それは単に潜伏期間だったからにすぎないだろう。
既に正式な日本の入国審査を通過して日本に来てくれた方々なのだから、相応の対応をすべきなのは言うまでもない。
とはいえ、外形的な証拠はないかもしれないが、もし仮に上記のような「日本の保険制度の抜け穴」を目指して来日した罹患者が一人でもいた場合、最も問題にすべきは、この状況を放置し続けている日本側の政策の遅れだろう。
クローズアップ現代の放送が2018年7月であったことを考えれば、この状態はもっと前から顕在化していたはずだ。そこから、産経・佐々木氏の記事が掲載された時点までの1年半でどのような対策を施したのか、その差分をぜひ知りたいと思う。
いずれにしても、今後の状況の推移を見守りたい。