不動産絡みの仕事というのは昔からうさん臭さを伴っているイメージがあります。そういう私も大学1年生の時に友人に付き合って受験した宅建が合格してしまったことが私の人生を変えました。日本で不動産開発の仕事をしていた時、今と時代こそ違えど、これほど悪人や悪人に群がる子分がいる業界もすごいと感じたものです。
なぜゼネコンが自社開発で泥まみれになったのでしょうか。80年代、ゼネコンは新規の案件を受注するのに必死で、利益を削ってでもとにかく仕事を取ってくるのですが、営業部から土木や建築部に案件が廻ると「こんな受注金額でどうするんだ」と喧々諤々の騒動になります。
そこで自社開発ほど楽な商売はないという視点が生まれます。例えば私が手掛けた自社開発のゴルフ場案件はコース造成とクラブハウスで驚くことに100億円かけたのですが、法人会員権を平均1億円で売っていたので十分な利益が出て、社長賞を受賞しました。
その後、私は社長、不動産部部長と3人で進める特命係を「拝命」し、特殊案件ばかり手掛けていました。その際に見た不動産を取り巻く怪しい人間たちには辟易とするものがありました。強欲でマネーしか愛せないその世界は私の人生で最も狂っていた時代でありましたが、絶対に経験できない世界を見せてもらったことも事実であります。
なぜ、不動産には悪い奴らが集まるのか、といえば扱う金額が大きいこと、不動産売買そのものからマネーのにおいがプンプンするため、悪徳な輩が入り込む余地が大きいということなのでしょう。
ここ数年、融資の書類改ざん事件が世を騒がせました。スルガ銀行やTATERUなどその一角でありますが、日経が同社の独自調査としてアルヒという東証一部上場の住宅ローンあっせん会社を取り巻く改ざん疑惑を報じました。
アルヒは全国に153店舗あり、その8割がフランチャイズ店。そして今回の日経のスクープは神奈川県内の特定のフランチャイズ店2店舗を中心に改ざん行為が行われていたようだ、というものです。投資用マンションを十分な年収がない人に買わせるというものであります。記事によると新生銀行グループのアプラスがそのローンを付保しています。
この疑惑、悪徳業者が不動産の売買手数料欲しさにローン審査を通す細工を行ったとみるのがありうる推測だと思います。いわゆる会社ぐるみの案件ではないとみています。
通常は不動産を現金で買う人はほとんどいませんので不動産ローンがつくかどうかが購入条件となります。アルヒはその審査を早く通すことが売りでフラット35の扱いは業界NO1とされます。実際にアルヒのウェブサイトにも「特長1:スピーディーな審査!お急ぎの方も安心。事前審査も本審査もすばやく対応。『時間がない』『人気物件で競争が激しい』などの場合もご相談ください」とあります。
ところがこの日経のすっぱ抜きがでて同社の株価がストップ安まで売り込まれると同社はプレスリリースを出します。「弊社が取り扱う『アプラス投資用マンションローン』に関しては、主に不動産事業者から持ち込まれた書類を取り次ぎ、株式会社アプラスへ送付する業務のみを担当しており、同ローンの審査、融資実行や債権管理等は弊社で一切行っておりません」と。
投資マンションローンはフラット35とは違うローンで、アルヒとアプラスの業務関係を構築していく中で様々な取り決めがあったといいたいのでしょう。しかし、結果として顧客の利便性ではなく、業者間の利益を考えた関係であり、そこに双方の責任所在の確認が抜けてしまっているのです。
アプラスはアルヒを通してきた書類には一定の信用できる担保価値があると考えていたようでここに落とし穴が生まれてしまっています。想像するに末端の不動産屋が悪さをしたのだと思いますが、一部上場の2つの会社がそれを見逃してしまうスキームがそこに存在していたことは不動産を扱う会社としては腑抜けだったと思います。
不動産事業を取り巻く業界には残念ながら今でも悪徳はいます。積水が詐欺師に騙されたこともありました。一般の投資家もサブリースなど、おいしい話と飛びついたからですが、世の中、旨い話など存在しないことをもう少し認識すべきでしょう。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年1月28日の記事より転載させていただきました。