検証:新型コロナウイルス・インパクト、株価は歴史の韻を踏むのか

安田 佐和子

新型コロナウイルス肺炎が与える米株市場の影響について、SARSを振り返りながら現状との相違点を比較しつつ検証していきます。なお、刻々と変化する新型コロナウイルス情勢は、こちらが便利です。

(カバー写真:Christopher Berry/Flickr)

●世界のGDPに対する中国経済の比率はSARS大流行当時5.4%だったが、2017年には13.1%。中国経済が世界に与えるインパクトは、当時から格段に拡大。

(作成:My Big Apple NY)

●世界全体に占める中国の輸出比率は12.9%で1位、輸入比率は10.9%で2位。


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●G20参加国の中国輸出依存度は、2003年と2018年を比較しアルゼンチンを除き全て上昇。特に、豪は2003年の8.4%から2018年に29.1%へ、ブラジルは2003年の6.2%から26.8%へ拡大。G20参加国中、2018年時点で中国が1位の国は7ヵ国、2位は3ヵ国、3位は4ヵ国となる。

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●世界中から海外旅行者が最も集まる国は2018年時点でフランスで8,900万人、次いでスペイン(8,300万人)、米国(8,000万人)、中国(6,300万人)となる。上位10ヵ国に世界全体の海外旅行者の4割が集中するかたちに。また、欧州各国がランキング上位を占める。

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●世界の海外旅行者数と、旅先での支出額は比例せず。2018年に旅行者が最も支出する訪問先は米国で2,140億ドルと上位2~4位の合計を上回る。旅行者数で4位に入った中国は支出額で10位の400億ドルに対し、旅行者数で圏外だった日本は9位の410億ドル。

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●上記の最も海外旅行者が支出した対象国ランキングのうち、海外旅行者の減少により経済が最も打撃を受ける国は、支出額上位10ヵ国でみるとスペインで旅行者支出は家計支出比で6.8%に。次いで豪(6.0%)、フランス(4.2%)となる。日米はそれぞれ1.4%、1.6%にとどまり、米国は海外旅行者の支出が最も大きいながら米経済全体に占める影響は限定的

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●SARSと比較し、日本や米国などで訪れる中国人海外旅行者の比率が大幅拡大。日本では訪日外国人のうち2003年の8.6%(45万人)から2018年に26.9%(838万人)へ上昇。米国は2003年当時、アジアの比率が14.5%(500万人)で日本人が9.2%(316万人)、韓国人が1.8%(62万人)。しかし2018年は中国人が3.8%(300万人)、訪米外国人の各国別では日本の4.4%(349万人)に次いで6位

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●世界の主要株価指数は、対中貿易・観光などサービス収支のエクスポージャーが高い国、リスク許容度低下の影響を受けやすい地域などで下落が目立ち、エマージング・マーケット・インデックスは4.7%安英FTSE100は4.2%安伯ボベスパは4.1%安旅行客の影響を受けやすい欧州各国を反映しユーロストックスも4.0%安と弱い。ただし独DAXは0.5%安にとどまり、米国は1.0%安。日経平均は時差の影響からほぼ横ばい、世界同時株安を受け2月以降に急落気配。

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●2000年以降、疫病が蔓延した当時を振り返ると流行期間は平均52.8営業日S&P500の平均リターンは8.1%安。SARS流行当時は、12.8%安と調整入り。足元の新型コロナウイルスは、米国で患者を確認した1月21日から1月末までで3.1%下落。今回もSARSなどの疫病大流行時と同様の反応にとどまれば、調整入りが見込まれる。

(作成:My Big Apple NY)


●2003年当時の各国・地域の主要株式指数を振り返ると、SARS発生直前の2002年10月からWHOが異例の緊急事態宣言を発動した2003年3月(同時期、イラク戦争が開戦)までに、先に下落していた中国以外で売りに傾いたが、2003年末は逆に中国以外で大幅高となり、MSCIエマージング市場指数は56.4%高日経225とS&P500は20%超に。当時はITバブル崩壊後の利下げ局面終焉時期で今回は利下げ後の低金利時期にあたり、今回も株高が期待できるか。

(作成:My Big Apple NY)

――マーク・トウェインは、こんな名言を残しました。「歴史は繰り返さない、韻を踏む」。今回の新型コロナウイルスでは、収束にかけ株価上昇といった韻を踏むのでしょうか。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2020年2月2日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。