(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)
「中国における新型コロナウイルス感染症の大流行は、習近平政権にとって清朝が倒された辛亥(しんがい)革命ともなりかねない」――。
米国の著名な学者が、全世界に感染が広まる新型コロナウイルスの習政権への潜在的な重大影響についてこんな見解を発表した。新型コロナウイルス感染症は習近平政権の意外な弱さを露呈して、政権自体の危機をも招きつつあるという見解である。
政権の存続が問われる事態に
米国スタンフォード大学フーバー研究所のアジア問題の権威、マイケル・オースリン研究員は、米国の大手紙ウォール・ストリート・ジャーナル(2月7日付)に「ワシントンから武漢まで、すべての視線が習近平に」と題する論説記事を発表した。
オースリン氏はアジアの歴史や政治を専門とし、エール大学の教授やワシントンの大手研究機関AEIのアジア担当主任研究員などを務めてきた。著作も多く、日本を含む東アジアの研究では全米的に知られる学者である。
記事の副題は「習近平氏は自分の能力への評価が危機に瀕したことを知っている」である。オースリン氏はこの記事で、新型コロナウイルスの爆発的な感染は中国共産党政権の独裁の弱点の露呈であると断じるとともに、感染拡大は習近平政権に内外での危機を招き、同政権の存続が問われるにも至りかねない、と主張している。