知っトク解説:今回は“非常事態宣言”

中田宏の知っトク解説。今回は“非常事態宣言”

「緊急事態宣言」や「非常事態宣言」などと言われており、今は新型肺炎の拡大に対する対応として、例えば国民や外国人の入国や移動の制限、疑わしい人の強制検査や入院などで必要ではないかと言われたりしています。

世界各国を見ると、国家存亡の危機や人命が脅かされる事態、治安が著しく悪化したときなどに出されています。
大統領や内閣の宣言で、様々な法律にまたがる形として、例えばフランス、ドイツ、韓国などは憲法に規定されています。一方で、アメリカは緊急事態法という個別の法律があり、成文憲法がないイギリスでは法律を定めています。

想定される事態としては、地震などの自然災害、紛争や戦争、最近ではテロ行為などがあります。

フランスでは2015年のパリ同時多発テロの直後に、オランド大統領が国家非常事態宣言を出しました。アメリカでは2009年にオバマ大統領が新型インフルエンザに対応するために宣言しました。現トランプ大統領はメキシコとの国境の壁建設や反米のニカラグアの特定人物の資産凍結などの際に宣言して賛否両論がありました。最近では2月1日に新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、「公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。国によって様々ですが、こうした宣言のもとでは、国民の移動の自由を制限したり、警察の捜査権を拡大したり、平時では違法なことを実行できるようになります。

日本では、東日本大震災の際に、津波で流された車が道をふさいでいても、それを強制的に排除することができなかったり、多くの遺体を火葬しなければならないが、安置に混乱を極めたりしたことがありました。また、大きな地震や水害の際などには、救援に向かう自衛隊車両が緊急車両として扱われるないために、渋滞に巻き込まれているなどの問題が発生したために、こうした緊急事態時の法整備が必要と言われています。

日本は法治国家ですから、いざというときでも超法規的措置を取ることは許されません。そこで、緊急事態宣言や非常事態宣言を日本国憲法に記載すべきだという議論、各法律を変えるという議論、緊急事態そのものの法律を作るという議論などがあります。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年2月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。