想定外の落ち込みだったGDP:どうなる、日本経済

岡本 裕明

10-12月の日本のGDPがマイナス1.6%(年率換算マイナス6.3%)と発表されました。私は正直、固まりました。そこまで悪化しているとは想定をはるかに超えています。先週の土曜日のこのブログで1-3月のGDPについてマイナス1-2%は覚悟しなくてはいけないと申し上げましたが、更に弱気修正しなくてはいけないかもしれません。2四半期連続マイナス成長はテクニカルな景気後退局面となりますが、ほぼ確実な状況となりそうです。

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安倍政権にとってもオリンピック前1年は景気が盛り上がるという前提であったはずなのにオセロゲームのように黒白がひっくり返っています。訪日外国人についても日韓関係悪化から韓国人が減り、新型肺炎で中国人が減り、挙句のはてに世界全体で人の動きが鈍くなれば当初目標の2020年訪日外国人4000万人どころか3000万人すら危ぶまれるかもしれません。

10-12月のGDP落ち込みについては消費税増税、および台風による影響と説明されています。もともと消費税増税後の消費活動については「今までほど悪くない」と報じられていたはずです。よって今回のGDP落ち込みの内訳は個人消費の落ち込みが2.9%で消費税と台風は確かにトリガー(引き金)にはなっているかもしれませんが、根本原因ではないように見えるのです。

企業投資も3.7%減となっている点からすると日本経済全体のシュリンク(縮小)が止まらないように感じるのです。つまり、下向き経済の傾向がより鮮明になる中、ネガティブな事態が発生するとその背中を一気に押すという状況です。それゆえ、消費税や台風、そして今回の新型肺炎は景気の落ち込みを説明するに実に都合がよい理由となるのです。

アメリカでハリケーンなどで大規模な被害があった場合、数カ月のうちにGDPは大きく回復するケースが目立ちます。例えば自動車などは生活必需品ですのですぐに販売増となって表れるし、住宅着工件数も時間差がありますが、確実に伸びるのです。つまり、壊れたら作り直すという「修復可能経済力」を持っているからのですが、日本は修復ができないのであります。理由は高齢化と経済的余力の低下であります。

私は日本経済については日ごろから厳しいコメントをさせて頂いています。高齢者が人口構成で大きくなる一方、その高齢者層が将来の不安から消費についてより保守的になっていることは大きいでしょう。就労しているアクティブ層の消費余力もあまりないこともありますが、それ以上にどうしても欲しいものがあるわけではない点も考えられます。

更に企業は消費を促進するため、サブスクリプションなど実質的に安価になるサービスを取り入れます。個人的には一時的ブームで終わるとは思いますが、企業があの手この手で消費者のハートを取り込もうとする苦労が見て取れます。

ではどう打開すればよいのでしょうか?以前から申し上げているように日本人はムードに流されやすい国民性であります。ならばまずはメディアがもっと景気の良いニュースを流すことからスタートするのもよいかと思います。ネットニュースは基本的に悪いニュースが主流でうれしくなったり楽しくなるような内容のニュースは散見できる程度であります。メディアによるマインドコントロールは好きではありませんが、それだけの影響力があることを踏まえ、編集者の方針を変えることが必要かと思います。

次に政治からの発信力を求めます。今の政権はもうずっと何も発信できていません。国民の向かうべき方向を経済、社会面からどうしたいのか、その方針が全く打ち出されず、最近は目先の事どころか、過去の事案に翻弄されています。

2月も中旬を過ぎ、春の足音が聞こえてくるこの時期、本来であれば人も動き始めるころなのに「不要不急の外出を控えよ」と言われると手も足も出ない、というのが正直なところではないでしょうか?

日本経済はいままで低空ながらもプラス成長を遂げ、「実感なき好景気」と言われてきましたが、そのうち、マイナス成長が当たり前、「実感なき不景気」という言葉がメディアを飾る日が来ないとも限りません。それぐらい日本全体の経済の足腰は弱まっているように見えます。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年2月18日の記事より転載させていただきました。