よいデジタル化と悪いデジタル化

情報通信政策フォーラム(ICPF)では2月18日にセミナーを開催し、平井卓也前IT担当大臣に講演いただいた。記録を公開したのでご覧いただきたい。

きなこもち/写真AC:編集部

印象深かったのは、平井衆議院議員の次の発言である。

デジタル化には今あるものを単にデジタル化するデジタル化(Digitization)と、ビジネスモデルを根本から変えてしまうデジタル化(Digitalization)がある。

今までは二つが混在していたが、これからは本当に役立つ後者のデジタル化を進める必要がある。そうしなければ、幸せな日本にはならない。

本当に役立つデジタル化を進めるために、平井議員は今、「デジタル推進法」の議員立法を用意している。IT基本法はじめ8本の法律を改正するもので、今国会での提出を目指している。

その理由が興味深い。

2000年のIT基本法(閣法)はいわばデジタル社会の憲法であるが、セキュリティへの意識が欠如していたなどの問題があった。サイバーセキュリティ基本法(議員立法)などで補ってきたが、この際、関連法すべてを抜本的に改正して、目指す社会の姿(基本理念)から書き直したいのだそうだ。

デジタルなしでは成立しない社会になっている。デジタルが競争力の源である。それへの対応が遅れているわが国に危機感を抱く平井議員の主張には説得力があった。

とある官庁から委員就任に関連して、情報提供を求めるメールが帰宅後に届いていた。Excel形式の書式があるが、氏名のフリガナなどは一文字ずつ分けて入力しなければならない。入力後はプリントアウトして押印し、郵送する。

書式は確かにデジタル化されているが、処理方法は旧態依然。今あるものを単にデジタル化した「悪いデジタル化」の典型だった。

悪いデジタル化をいくら積み重ねても、平井議員の主張する「よいデジタル化」には到達しない。講演の中で紹介されたように、デジタルにそぐわない法律案は「デジタル法制局」が撥ねつけるデンマーク方式を見習う必要があるかもしれない。