石破 茂 です。
本日夕刻の衆議院本会議において令和2年度予算案が可決され、参議院に送付されました。
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予算委員会での審議をずっと聴いていたのですが、かなり粗い議論に終始してしまったように感じています。不透明な経済情勢を踏まえた予算案の内容よりも、「桜を見る会」「IR」「検事長の定年延長」について議論が集中したのですが、全くと言っていいほどに噛み合っていませんでした。「桜を見る会」の総理後援会の前夜祭については、ホテルの領収書と明細書の有無についての確認ができれば簡単に済む話なのでしょうが、それが出てこないのも不思議でなりません。
IRについては、日本国民の経済的な犠牲によって海外業者が大きく潤うというものではなく、トータルで地域や日本経済全体にとってプラスになるものだ、という具体的な設計の提示が欲しかったところです。
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東京高検検事長の定年延長については、これまでの「一般の公務員とは異なり、検察官には定年延長は適用されない」としてきた政府解釈を突如として変更した理由と経緯について、国民が十分に納得出来る説明が必要です。現・東京高検検事長はおそらく有能で正義感に溢れた方なのでしょうが、それならそれで「彼は余人をもって代えがたい。現在のこの案件には彼以外対応できない」というある程度具体的な説明が必要でしょうし、そもそも正攻法で検察庁法自体の改正という方法を取らなかった理由も不分明です。
法務省には「行政機関がその意思決定に至る過程ならびに事業の実績を合理的に跡付け、後に検証できるように事務及び事業の内容を文書にする(軽微なものは例外とする)」という文書主義に基づく文書管理規則があるのですが、何故今回は口頭による決裁が行われたのか、明快な答弁ではありませんでしたし、法務省の考えを了とした人事院の意向を示した文書に日付がないことについて「人事院事務総長が法務事務次官に文書を手交したので文書に日付は不要」とした人事院の答弁もいまだによく理解できません。
まさか検事の定年延長を「軽微な事案」とするのでもないでしょうし、高官が手交すれば書類に日付は不要、と行政官が心底思っているわけでもないでしょう。今後の参議院の審議において国民が納得のいく説明がなされることを期待しています。
委員会や本会議では与党が多数を占めているので、何とか審議を乗り切ることは可能ですが、自民党の議員各位は本当にこれらの事案について選挙区で有権者にきちんと説明が出来るのでしょうか。各種世論調査において、内閣支持率や自民党支持率が低落傾向にあることは故無しとしないのであって、これを軽視してはなりません。遅くとも来年の10月までには来たる総選挙において国民の審判が下るのであり、私自身、敬虔な畏れをもって臨む気持ちを持っていたいと思います。
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新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、社会の動揺が収束する気配はありません。多くのイベントが中止・延期・規模縮小となり、インバウンドのみならず国内観光客も激減、経済へも深刻な影響が懸念されています。
政府も関係者もそれぞれ全力を尽くしていると思いますが、我々は3.11東日本大震災・大津波・原発事故の対応の誤りを繰り返してはなりません。国民が受ける多大な心理的・経済的負担と、感染拡大のリスクとの比較衡量が要求され、何をやっても必ず大きな批判に晒される極めて困難なオペレーションですが、あくまで国民の立場・目線を最優先とし、己の立場や保身を極力排して、情報の迅速・正確な公開に努めなくてはならないと考えています。
世の中に無謬などということはあり得ないのですから、クルーズ船乗客の下船の際の対応は不十分であったと率直に認めるべきでしょう。下船後も12.5日間は隔離できる環境を作り、経過を観察するべきでしたし、公共交通機関による移動を認めたことも適切ではなかったものと思います。私自身、入港時に「14日間は船内に留まって頂くべき」とテレビで発言したことを反省しております。
検査を拒否する権限が保健所にあるというのもどこか妙な話で、検査希望者が迅速に受検できる体制を医師会との協力のもとに早急に確立せねばなりません。希望者が殺到して大混乱になる、というのは理由にはならないように思われます。
新型コロナウイルス感染の症状は普通の風邪やインフルエンザとどこが違うのか、特効薬がない以上、安静にして免疫力を高める以外に対応策はないのですが、「罹患した時にどうするか」という情報発信も積極的に行う必要がありますし、集会やイベントの開催自粛についても明確な方針を政府として示し、開催者や会場などの損害についてある程度補償できるような方策も打ち出すべきではないでしょうか。
このような中で、総理が打ち出された「小・中・高・特別支援校の三月からの休校要請」は、国民にかかる負荷と感染拡大防止の効果を比較衡量の上、ご自身の責任において表明されたもので、決然たるご判断だったと思いますし、昨日の水月会総会において私も「春休みの前倒し、その間のエアコン未整備校の工事実施、夏休みの短縮」という趣旨の発言を致しました。
総理が述べられた通り、これはあくまで強制力を伴わない「要請」であり、判断は地域の実情を最も知悉した学校開設者(主に自治体)に委ねられます。小さなお子さんのおられる共働きのご家庭に対する支援など、国民が困惑している諸問題については、今後政府と自治体とが連携して考えられる限りの対策を早急に提示する必要があります。「あまりに唐突」との批判ばかりしていてもどうにもなりません。
例えば、保育士資格を持っていながら現場に出ていない「潜在保育士」は約80万人おられ、「自分の子育てに支障が出る」「責任が重い」「所得が少ない」というのがその主な理由だそうです。この際、「どの地域に、どれだけ潜在保育士が居られ、現場に出られない理由は何か」を悉皆的に把握し、たとえ短時間でも現場に出て頂く施策を早急に実行すべきと考えます。
また、地域コミュニティにおけるシニア世代による子どもの支援についても、システムを確立することができれば、子育て世代の負担の軽減とともにシニア世代の活躍にもつながります。
この危機を一つの契機として、この問題に限らず、かねてからの諸懸案に総力を挙げて解決策を見出すことも意義あることです。
編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2020年2月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。