台湾ではマスクがあるのに日本ではない?

マスクが不足しているためか、通勤電車の中でマスクをかけていない人が目立つようになった。少し、心配な状況だ。

台湾ではスマートフォンアプリにマスクが販売されている店が表示され、そこに行くと枚数は制限されているが入手することができるという。多くの店で一定量のマスクが販売されているので、国レベルか、民間ベース化はわからないがコントロール下にあるようだ。

それに対して、日本ではマスクだけでなく、トイレットペーパーも店頭から姿を消した。 

オレンジ星/写真AC:編集部

そして、火事場泥棒のような転売が起こっている。私の知り合いの病院でも、マスクが底をついて困っているとの声が上がっている。

国内で1週間に生産されるマスクは1億枚強というが、国民一人毎日1枚使えば、単純計算で1週間の必要枚数は約9億枚となる。国民の3分の1が毎日マスクを変えても、需要と供給のバランスが大きく崩れていることになる。

それにしても、今になって中国と韓国からの隔離を含めた入国制限は解せない。経済活動と感染拡大阻止のバランスを考えて、このような措置ができなかったのではないのか?

潜在的な広がりを考えれば、一斉学校休校は正しかったと思うが、入国制限をするならば、その判断はあまりにもずれた感覚だ。

私は18日からアブダビに行く予定だったが、相手国から会議延期の通知があった。インドはすでに日本からの入国制限を課している。4月に講演を依頼されていた日本外科学会と日本小児科学会は共に8月に延期となった。

現状を考えると、必要な措置だとは思うが、厳しい部分と、PCR検査体制などの不備、相談センターの不十分な対応とのアンバランスさが気になって仕方がない。学校は休みだが、子供たちは塾に通っている。これも理解しがたい。

クラスターを防ぐことが大事というが、症状の出た人はウイルスの排出量が多く、感染の伝搬が多くみられるだけではないのか?

そもそも、その人たちは優先的にPCR検査を受けたので、見つかりやすかっただけではないのか?

分母が定かでない分子だけの議論は日本の医学の弱点だが、どうもこのクラスター議論は、論点がずれているように思えてならない。

やるなら徹底的な措置が必要だが、自分の周りに感染者が出るまでは他人事なのだろう。知り合いにも咳が出て、体はだるいが、発熱していないのでPCR検査の対象にはならない人たちがいる。一人ではなく、複数だ。電話で相談を受けても、自宅で静かにしていてくださいとアドバイスするしかない。

東京では、3代に渡る感染が確認されている。感染は深く静かに広がっているのだろう。目に見えない敵に勝つには、敵の怖さをみんなが認識して、敵に対峙することだ。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2020年3月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。