新型コロナの「緊急事態宣言」は必要ない

池田 信夫

新型インフルエンザ特措法が来週、改正される運びになった。14日から政府が「緊急事態宣言」を出し、自治体が外出自粛や休校を要請できるようになるが、これは必要ない。日本の新型コロナ感染は鎮静化しているからだ。

感染は中国ではピークアウトしたが、世界にはまだ広がっている。奥村晴彦氏の集計でみると、中国の感染者数(1日の増加)は2月上旬にピークになり、そこから1ヶ月ぐらい遅れて他の国も感染者が増えている。


図1

特に韓国とイタリアとイランの感染者が多く、ドイツとフランスも日本を抜いた。これにはいろいろな要因があるが、最大の要因は検査の数だ。韓国では10万9000人、イタリアでは2万3000人も手当たり次第に検査し、陽性になった人をすべて入院させたため、医療が崩壊して他の病気の患者まで死んだ。

検査が増えると陽性(感染者)が増えるのは当たり前だ。新型コロナは単なる風邪であり、感染者の数は問題ではない。エボラ出血熱のように致死率が高いなら危険だが、コロナの致死率はインフルエンザとほぼ同じだ。初期には武漢で致死率5.8%になったが、全数検査に近い韓国では0.1%以下である。これからサンプルが増えると、世界全体でこの程度になるだろう。

大事なのは感染者ではなく、集中治療室や人工呼吸器の必要な重症患者の数である。Worldometerの集計によると、図2のように全世界で入院している患者は2月下旬でピークアウトし、重症患者も減っている。図1でもわかるように、世界の死者の増加は毎日数十人でほぼ一定だ。これは「3大感染症」で毎年400万人以上が死ぬ世界ではマイナーな数である。


図2

日本でも3月6日現在の重症患者(累計)は30人で、感染者333人の9%である。入院患者は増えているが退院も増え、純増は減っている。検査の数は医師の裁量で大きく変わる(今週は3倍以上に増えた)が、重症患者は今週7人しか増えていない。死者は6人で、月曜から増えていない。


図3

要するに日本の新型コロナへの対応は、全体としてうまく行っていると評価できる。闇雲に検査して医療の崩壊をまねくことなく、患者の命を守ることに成功している。これはダイヤモンド・プリンセスの処理に追われて検査体制の確立に時間がかかったための怪我の功名かもしれないが、結果がすべてである。

世界的にはまだ警戒が必要だが、日本の感染は最悪の時期を脱したと思われる。今後、爆発的に重症患者が増える要因は見当たらない。来週は一斉休校を解除し、徐々に平時に戻る態勢に入るべきだ。