昨日(3月9日)、東洋経済ニュースで知りましたが、昨年4月にこちらのエントリーでも触れております上場会社さんが、えらいことになっていますね。元代表者の言い分と第三者委員会の認定事実とどちらが正しいのかはわかりませんが、すくなくとも元代表者の方が監査役の役割を軽視しておられたことは間違いないようなので、それはとても残念です。
そして報告書が公表された当時、とても話題になりました「(元代表者の方の)私的にメールを送った女性関係図」なるものが、第三者委員会の調査において必要だったのかどうか、調査目的との関係で、ぜひ真剣にご議論していただきたいと思います。
さて、いつも有益な情報を頂戴している「第三者委員会ドットコム」さん(上記会社の第三者委員会報告書の存在も、ここで知りました)のHPにおいて、2月14日以降、会計不正もしくは不適切な会計処理を適時開示する上場会社がひとつも見当たらないことに気が付きました。コロナ・ショックで株価急落の中、上場会社では会計不正事件は起きなくなってしまったのでしょうか?
ちなみに、上記HPから、2019年1月~3月の会計不正・不適切会計処理に関する適時開示の数を調べてみますと、2019年1月6件、2月6件、3月は7件となっておりました。それと比べて、今年は1月9件、2月6件、3月0件です。おそらくどこの会社でも、ビジネス自体が混乱してしまって、内部監査や不正調査における疑惑解明といった職務自体が停滞しています。そんな中で、過去の不正が表面化する確率がかなり減ってしまった、というのが現実ではないでしょうか。
会社が非常事態となり、ジョブシェアリングやテレワークが採用されるとなると、職場で隠ぺいしていた不正が発覚する機会も増えますよね。ただ、会社が非常事態から脱却するために、社員一丸となって業績回復に邁進するなかで、「この人、不正やってます」と手を上げることって、かなり勇気が必要です。このあたり、職能給制度の国と職務給制度の国では差が出るように思います。
よく「2019年と2020年を比較して、今年は会計不正事案が多かった(少なかった)」といった調査結果がリリースされますが、コロナ・ショックの影響で、今年は比較すること自体があまり意味がないかもしれませんね。
編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2020年3月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。