コロナ感染拡大のスペイン、国を挙げての総力戦へ

スペインの新型コロナウイルス感染者は3月22日の時点で24,926人、死者1720人。それでも、まだピークには達していないらしく、スペイン保健省は3月25日の時点を一つの山場と見ている。

感染者の数がスペイン全体のほぼ半数を占めるマドリード州では国際展示会場内に臨時の病院を仮設して5500台のベッドを設置した。同州でコロナ患者が入院している37のどの総合病院もすでに満杯の状態になっているからだ。

スペイン政府サイトより

また、マドリード市内の2つのホテル、グラン・ホテル・コロンとホテル・マリオット・オーディトリウムも病院に変身した。前者には市内の3つの総合病院で収容できない患者を移し、後者には州内の3つの主要都市の総合病院の一部患者を移している。どの病院も救急集中治療の患者は定員の2倍にまで溢れている状態だという。

コロナに感染している医師と看護師が500人以上いるということもあって、法相は病理医756人と医学研究所から180人も前線に出て治療に当たることを許可した。(参照:elconfidencial.com

また手袋、マスク、防護服、ゴーグルなどが不足しているのに加え、患者にとって肝心の人工呼吸器も不足し始めていることから、年齢の差別なく生き延びる可能性の高い患者を優先して治療する必要にまで迫られているのが現状だという。これ程まで事態は深刻度を増している。(参照;elpais.com

マドリード州以外の他の自治州でもこれから更に感染者は増加すると見て、各州もプレハブ病院の建設を開始した。筆者が在住するバレンシア州ではバレンシア県で500台のベッド、アリカンテ県で400台、カステリョン県で200台を収めるプレハブ病院を建設することになった。2週間以内の完成を目指している。(参照:levante-emv.com

不足している医療品については、各自治州で個別に輸入しようとしたが、スペイン政府がそれを阻んで政府が一括して輸入しようとした。その影響で輸入の為の事務上の官僚システムが影響してこれらの物資の入手が遅延している。各自治州のクレームもあって、政府はそれに気づいたようで、各自治州が独自に輸入できることを今月20日、認可した。

国中が封鎖状態のスペイン(calafellvalo/flickr)

一方、アパレルブランドZARAの親会社インディテックスは今月18日に認定マスク1万枚を保健省に納品した。さらに、週末21日に30万枚を納品する予定だという。また、インディテックスは政府が中国で買い付けるマスク、手袋、ゴーグル、キャップ、シューズなどの中国から輸入に輸送のロジスティック面で協力することになっている。インディテックスが中国にもっているアパレルの生産業者や協力企業の支援もあってインディテックスがイニシアティブを取りやすくなっている。

また、その縁から中国精華大学の協力も得て医療保健関係品の原材料へのアクセスも容易だったそうだ。というのは、インディテックスでは自社の生産設備を利用して医療品の生産を開始する予定なのである。

先ず、防護服の生産からスタートする意向のようだ。(参照:cincodias.elpais.comeldigitaldealbacete.com

一方、スペイン国王フェリペ6世は中国アリババの創業者ジャック・マーと接触して50万枚のマスクが寄贈されることが決定したことも明らかになった。(参照:okdiario.com

スペイン人は何事も事態が深刻になるまでエンジンがかからない傾向にある。ここに来て事態は非常に深刻となり、ついに国を挙げての総動員となった。

また何も協力できない市民に対しては「家から出ないこと。これが市民が協力できる最高の協力だ」と言って市民の外出を極力控える世に保健省は要求している。

その一方で、患者の治療に当たっている医師そして看護師にバルコニーや窓から一斉に拍手で彼ら「英雄」に感謝する行為が繰り替えされている。そしてそれに感謝して医師と看護師も病院の入口から拍手で答え、また救急車はサイレンを鳴らして市民に感謝するサインを送っている。(参照:下記YouTube)