こんにちは、都議会議員の鈴木邦和です。昨日、東京都の小池知事が記者会見で「首都封鎖」について言及したことが各メディアで報道され、Twitterでもトレンド入りするなど大きな関心を集めています。
【都知事「首都封鎖あり得る」】https://t.co/LnrQo1ioYc
東京都の小池知事は、新型コロナウイルスの大規模な感染拡大が認められた場合は、首都の封鎖もあり得るとした。都民に対し、大型イベントの自粛などを改めて求めた。
— Yahoo!ニュース (@YahooNewsTopics) March 23, 2020
知事の記者会見における正確な発言は「事態の今後の推移によりましては、都市の封鎖、いわゆるロックダウンなど、強力な措置をとらざるを得ない状況が出てくる可能性があります。そのことを何としても避けなければならない。」というものです(発言全文はこちら)。
私は、経済活動の停止や都市の封鎖について、一貫して慎重な立場を取ってきました。それはコロナによる死者よりも、経済的困窮による自殺者の方が現時点では深刻だという危機意識からです。過去の経済不況時には年間5千人〜1万人の単位で数年にわたって自殺者が増加しています。すでに業界によっては大打撃を受けており、この状況が長期化すれば人命に関わります。
一方で、万が一、東京が都市の封鎖を実施する場合は、そうした経済活動の停止による大被害をも超える、例えばイタリアのように数万単位での死者(3月22日時点で死者5476人)が想定される時です。そして、東京は現時点でその「万が一」の可能性を排除できない、決して予断を許さない状況にあります。だからこそ小池知事は敢えてこの段階でも「都市の封鎖」という強い表現を用いて、改めて大規模イベントの自粛などを求めたのだと考えています。
東京の置かれた状況と対策
危機における政治の究極目標は人命の損失を最小限に抑えることです。コロナによる被害と経済不況による被害を常に見据え、その都市が置かれた状況に応じて対策を決める必要があります。そして、現段階での東京の対策は「経済活動の制限は最小限にしつつ、患者の爆発的な急増を引き起こしかねないイベントは中止し、一人ひとりが感染拡大の3条件が揃う場所に行かない」ことです。
現在の患者数の推移であれば東京は対応できますが、先日示された専門家会議の分析・提言にあるように、今後もし患者の爆発的な急増、いわゆる「オーバーシュート」が生じると、医療提供体制が崩壊状態に陥り、通常であれば救済できる生命を救済できなくなります。そうなれば欧州各国のような都市封鎖は避けらず、コロナと経済不況による二重の大惨劇を引き起こします。
そして、この患者の爆発的急増、いわゆる「オーバーシュート」を引き起こさないためには、「換気の悪い密閉空間」、「多くの人の密集する場所」、「近距離での会話」、この3条件が重なる場を徹底的に避けなければいけません。今回、小池知事が4月12日まで3週間の大規模イベントの自粛を要請し、各個人への注意喚起を行ったのは、そうした専門家の提言を受けての判断です。
国は「自粛要請」と共に補償の検討を
しかし、私は自粛の「要請」だけでは限界があると考えています。一昨日には、国や埼玉県の自粛要請には応じない形で、6500名程の大規模な格闘技イベントが開催され、大きな波紋を呼びました。
【K1強行開催 ファンからも疑問】https://t.co/9GNYdwOoc8
国や埼玉県が開催自粛を求めていた格闘技イベント「K-1」が22日、予定通り行われた。ファンからは「感染は自己責任とはいえ、高校野球も自粛しているのに開催はちょっと」と疑問の声も聞かれた。
— Yahoo!ニュース (@YahooNewsTopics) March 23, 2020
イベントを主催する事業者にとっては、その中止が会社の倒産につながるならば、規模を縮小しても開催するという判断は考えられ、今後もこうしたケースは必ず出てくるはずです。もし要請に応じない大規模イベントが各地で繰り返されれば、やがてオーバーシュートを引き起こす可能性は高いのです。
私は、政治行政がイベントの自粛を要請するならば、一定の経済補償をセットで用意しなければいけないと考えています。現在、国では30兆円規模の補正予算による経済対策が検討されていますが、その中にある旅行代助成などよりも、大規模イベントの中止に伴う補償にこそ、予算を充てるべきです。東京都もいち早く無利子融資などの経済対策をまとめていますが、この規模の経済補償は都道府県では対応できません。ぜひここは国で検討して頂くと共に、都としても日々刻々と変化する状況を注視しながら、あらゆる対策を実施していきます。
編集部より:この記事は東京都議会議員、鈴木邦和氏(武蔵野市選出、都民ファーストの会)のブログ2020年3月23日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は鈴木氏のブログをご覧ください。