米上院は26日、約2兆ドルの景気刺激策(H.R.748)を96対0の全会一致で可決しました。下院では27日に採決を予定し、順調にいけば週明けまでにトランプ大統領が署名する公算。景気刺激策の柱は以下の通り。
・小切手支給 3,010億ドル
→2019年の所得が独身で7.5万ドル以下、夫婦で15万ドル以下の個人に対し、1人当たり1,200ドル支給
→16歳以下の子供1人当たり500ドル、4人家族なら3,400ドル
→独身で7.5万ドル以上、夫婦で19.8万ドル以上から支給額を減額、独身で9.9万ドル以上、夫婦で21.8万ドル以上の場合、受給資格なし
→4月中に支給の予定
・失業保険の拡充 2,500億ドル
→州の失業保険支給額に上乗せし、特別措置として4ヵ月間、週当たり600ドル支給
→州政府の失業保険支給終了後、連邦政府が13週間にわたり追加で支給(州の失業保険支給額は200~550ドル、支給期間は12~28週で、それぞれ州によって異なる)
・航空会社、貨物業者支援 320億ドル+290億ドル
→賃金補償に320億ドル、緊急支援に290億ドル割り当て(業界団体エアラインズ・フォー・アメリカは賃金補償と緊急支援につき、それぞれ290億ドルずつ要請)
チャート:景気刺激策の柱
1,200ドルの小切手は耳障りより破壊力に乏しいものの、失業保険が手厚く拡充された点は大きい。全米平均で39週、約10ヵ月にわたり受給できるため、その間に新型コロナウイルスが終息しワクチンが開発されれば、景気回復へ向けた不確実性が後退する希望を残します。特に、過去最悪の記録を打ち出した後では尚更です。
また今回、航空会社や輸送業者に対する支援も満額回答でした。こちらにある通り、欧州を中心に航空会社は従業員の約8割をレイオフするなど壊滅状態ですから、米国が人員削減を回避する上で重要な決断だったと言えるでしょう。
何より重要な点は、米連邦準備制度理事会(FRB)による社債、株式、地方債の買い入れに道筋をつけたことです。企業を軸とした4,540億ドルの支援について明記した条文には「企業や州政府、地方政府などへの貸出を支援する金融システムに流動性を供給する目的で、FRBにより設立されたファシリティーあるいはプログラム」との文言があるのですよ。そして、「貸出を支援する金融システムの流動性供給は」①発行体からの債務やその他株式の直接買い入れ、②二次市場での債務やその他株式などの買い入れ、③融資——によって為されるというではありませんか。
既に23日に導入したPMCCFなどファシリティーを追認したようにも見えますが、日銀のように社債だけでなく、株式や社債を含めた支援措置を講じる日が近づいたと言えるでしょう。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2020年3月27日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。