陸自にイージス・アショアは必要ありません。寧ろ有害です。
アショア導入によってアメリカ様の歓心を買おうというのは、官邸、特に和泉補佐官の独断専行であると思われます。安倍首相が軍事に情弱なことをいいことに、独断で話を進めたようです。
しかも海自の導入しているレイセオンのものではなく、全く別のロッキード・マーティンのものをいきなり導入と官邸で決めてしまった。当時の小野寺防衛大臣は知らせを聞いて大臣室で怒号をあげたといいますから、防衛省は蚊帳の外だったのでしょう。補佐官にそんな権限なんかありません。
まさに、(安倍首相、このフレーズすきですよね)、ナチスドイツの総統府が思いつきで国防軍にあれこれ高圧的に命じるのと同じです。第二次安倍内閣はナチスを手本としているのでしょう。国威発揚のためのオリンピックも大好きですしね。コロナ問題がいつ収束するのか変わらないのに、来年にオリンピックやるんだと決めていることろ、大戦末期のヒトラー総統を彷彿します。
軍事的な整合性もなく、非常に高価な装備を自衛隊に押し付けることよって、自衛隊の戦力が大きくそがれることになるでしょう。中国や北朝鮮は大喜びでしょうねえ。
話をイージス・アショアに戻しましよう。問題点は幾つもあります。まず、日本の安全保障上の貢献度は小さい。できるのは蓋然性が低い北朝鮮からの弾道弾攻撃への対処のみ。中国の脅威対処等、他の海域の日本の安全保障には役に立たちません。また2か所で約3,000億円(下手すると6,000億円以上)の費用は費用対効果が低すます。
次に自衛隊が、その存立基盤である国民、住民の支持を失うことになります。
既に何度もご案内のように海自イージス艦のレーダーは距岸50マイル以遠のみ運用可(レーダーによる影響度が大きいため。)近隣住民の健康懸念は当然です。レーダーはサイドローブと呼ばれる軸線以外の広範囲への漏洩電波輻射は避けられないため、超高出力のSPYレーダーは近隣に影響を及ぼすことを避けられません。
逆に申せばアショアがOKならばイージス艦は停泊地でもイージスレーダーを使用することになんの問題もない、ではなんで50海里も離れて使用しているのだ、という話になります。
このような問題があるにも関わらず、強硬に導入すれば候補地の住民及び県民の自衛隊そのものに対する反対反応を招きます。
そして自衛隊、特に陸自の負担が増します巨額な出費で陸自の負担が増加(装備更新・訓練・整備費が不足して任務に支障を来たします。
運用認定試験はハワイの米軍の設備(システム)で実施せざるを得ない。これはハワイの試験用設備(システム)まで日本の負担とされる恐れ大きいでしょう。しかも実際の施設で試射もできず、迎撃はぶっつけ本番になります。
更に申せば海自のイージスレーダーとの互換性がなく、訓練、兵站でも振り出し、開発費まで日本が負担する可能性もあります。当然導入コストがかかります。またアショアだけ導入するだけですまず、ドローンを含めて対空システム、またゲリラコマンドウ対策も必要であり、この費用もかなりかかります。
またドローン、巡航ミサイル、コマンドウなどの攻撃を迎撃するさいに地元のに副次被害がでます。例えば30ミリ機関砲で射撃を行えば、かなりの範囲で爆発する弾頭をばらまくことになります。それは
イージス・アショア導入計画は廃止すべきです。違約金を払っても、イージス・アショア計画を廃止すべきです。そうすれば住民の健康被害懸念及び住民(地方自治体)の反対は無くなります。
その代わりに海上自衛隊にイージス護衛艦3~4隻を追加します。艦艇は移動可能であり、様々な脅威や事態に柔軟な対処が可能です。イージス艦は弾道弾対処以外の脅威対処能力も汎用護衛艦より高い。1隻あたり約1,800億円(4隻で約7,200億円)と少し高額となるが費用対効果は高い。
また既存のイージス艦と同じシステムを使えば米軍の試験設備(システム)や、開発費の日本負担の可能性は無くなります。既存の海自教育体系の中でイージスシステム関係者の教育が可能ですから効率もいい。
その代わりに海自の旧式護衛艦の除籍促進・能力の低い艦艇の建造を中止すべきです。現代戦を戦えない、きり級護衛艦以前の艦艇全て(18隻)を短期間に除籍する。こうすれば維持経費の削減、人的資源の確保、有効活用が可能となります。
更に能力の低い艦艇(FFM及び哨戒艦)の建造を中止し、その代わりに滞空型無人機導入による海自の警戒監視任務負担軽減と能力向上をおこなう。
艦艇隻数減に対する警戒監視任務の負担軽減と能力向上のため、MEAL型の滞空型(24時間以上の滞空時間)大型無人機を5機~6機導入すれば十分でしょう。洋上警戒監視任務は一義的に無人機の任務とし、監視エリアが拡大、遠距離から昼夜の監視(光学・電波・レーダー・AIS)が可能になります。
艦艇では近接しないと確認できない。広い海域は監視できないので、監視、警戒と言う意味では遥かに効率的です。また、近接による無用なトラブルを避けられ、更には海自航空部隊の労力の軽減にもつながります
この方法ならば対米関係をより良好にもできるでしょう。イージス・アショアは2セット分のみですが、新たにイージス艦を3~4隻建造するなら、米国企業は1.5~2倍の売上を期待できます。米国企業の利益が大きければ米国政府は賛成するでしょう。
ですからアメリカ様のご機嫌を損ねることはない。移動可能なイージス艦、台湾有事や他の様々な脅威に対して機動的に米海軍と連携し、米国のアジア戦略に寄与することができる。つまり運用の柔軟性があります。
Japan in Depth に以下の記事を寄稿しました。
■本日の市ヶ谷の噂■
陸自のヘリパイロットの年間飛行時間は約80時間で北朝鮮以下とあるといわれているが、その理由のはバカ高い買い物をしたツケ、で整備費や部品代が賄えないこともあるが、更に老朽化したAH-1Sの機体寿命を持たせるために、飛行時間を制限していることも要因との噂。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2020年3月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。