新型コロナウイルスの影響によって、子供たちは2週間、本来受ける権利のある授業を受けれていません。東京ではGW以降に授業を始めると言っています。新年度のスタートが、1週間遅くなれば3週間、GW以降となれば5週間、授業を受ける権利が放棄されているということになります。もちろん新型コロナウイルスが原因ですが、何もなされないというのは、教育行政による人災と言われても致し方ありません。
教育に係る法律、著作権、教育現場でのIT人材不足、規制等、やれない、出来ない理由を並べればいくつも出てくるはずです。自宅待機を求めるなら、自宅で遠隔授業を受けられる環境を整えることが筋道ではないでしょうか?規制改革の議論や学校現場でIT人材育成を行っている場合ではありません。サンドボックスの発想に立って今すぐにでも、規制を乗り越えて遠隔での授業を行うべきなのです。
遠隔授業を行う為のITツールは既にあります。無償の物もあれば、有償の物もある。有償と言っても高額な物ではありません。これらを組み合わせれば、今でも出来るのです。あとは、やるかやらないか、という決断だけです。
日本の学校では、何もやらないという状況下にも関わらず、東京にあるアメリカンスクールでは、工夫と知恵の遠隔授業が行われています。文科省的に言えば、アメリカンスクールは所謂、普通の学校ではないのかもしれません。
でも、自宅待機になって2日目には、学校のオンラインでの授業が始まったそうです。そして、やりながら課題を整理し、更なる進化を遂げているそうです。今、世の中にあるものを使い、出来ることから直にスタートし、反応を見ながら、進化させる、この柔軟性が緊急事態には必要なのです。今、困っている人を助けられないルールなんて、何の意味も持ち合わせていません。
8時15分になると「ZOOM」を使い、クラス毎に先生と子供たちのホームルームが始まります。PCの画面には、先生やクラスメイトの顔が画面分割されて写っています。「Good Morning」から始まり、1日の過ごし方についてのお話があります。自宅待機の子供たちにとっては、朝の勉強スタート時に友達と顔合わせが出来る事がとても大切だと実感しました。小学校低学年、ましてや幼稚園生が、自らを律し、孤独に耐え、単独で自宅学習をやり続けられる程、子供たちは強くありません。
大人の在宅ワークも同様だと思います。僕の友人は、在宅ワーク最初の2週間は良かったけれど、以降は、生産性が落ちている気がする。一人で仕事を行う限界もあるかも・・・と言っています。スケジュールは、「Googleカレンダー」を使い日程を管理、生徒一人一人にGメールアドレスを提供し、グループ内の情報伝達にも使っています。
1日のスケジュール表、授業に使う資料、課題に対する説明動画等、その日の授業に必要なものは都度、「SEESAW」を使って先生から送られてきます。美術、体育など教える先生が変わる授業は、それぞれ別のSEESAWシートで送られてきます。与えられた課題に解答したペーパー、体育の課題で運動している動画、美術作品等は、SEESAWのシートに貼り付けて先生にチェックしてもらうのです。そして、先生が許可したものは、生徒の誰でもが見れるようになるのです。
先生が、学校や自宅から授業をZOOMで配信し、子供たちが参加する。PCの前で手を挙げれば、リアル学校と同じように先生がそれを見て、生徒を指名して発言させる。実際の授業をみていると、大きな声で「ハイ」と子供たちは手を挙げていました。動画配信によるリアルな授業、課題をSEESAWで提供しての課題学習、決して孤独ではなく、飽きさせない工夫のある学びがそこにあったのです。
視察日の授業は8時15分~30分Whole Class、8時30分~9時40分は英語Writing・読書、9時40分~10時10分日本語、10時30分~11時00分Small group Check-in OR ChoiceBoard・算数、12時15分~13時15分ランチ、授業は午前中に終了し、午後は自主勉強となっていました。工夫は所々に見られ、読書の時間はPCにカウントダウンをセッティングして、楽しみながらの読書です。今あるサービスで工夫をする。すべてをデジタルで処理するわけではなく、紙に書かせ、写メで送る。「先ず、やってみる」とは、そういう事だと思います。
日頃、学校から保護者への連絡事項は紙ではなく、デジタル。スマホで子供たちの情報を得ることも出来るそうです。それでも、新型コロナウイルにより、子供たちが自宅待機をせざる負えない状況下を想定していたわけではありません。どんな状況になっても、大人の都合に合わせるのではなく、子供たちが授業を受ける、勉強が出来る環境を整える、つまり、いち早く授業が出来るように工夫することが素晴らしいと思うのです。規制改革の議論待ち、文科省の指導待ち、公立学校の横並び、私学の様子見。自ら考え、行動し、世界に通用する人材の育成が、待ちの姿勢の組織に出来るとは思えないのです。
もちろん、僕も教育行政や学校の行動を待つだけでは、待ちの姿勢を批判できません。子供と話し合い、学校の時間割に従って勉強することを決めました。国語、算数は学校の教科書での復習。理科、社会は教材をネットで探し、動画を見せ、資料を見せ、内容要約、自分ならどうするかを考えさせ、文章にまとめさせています。体育は公園でのタイムトライアル。図画工作は、課題を出しての作品づくり。そして、何をつくったか、工夫した点は何かのプレゼン。動画を撮って本人にも後で見せます。
音楽は好きな曲を楽器で演奏させての発表会。宗教の時間は、学校がキリスト教(カソリック)なので、他の宗教(仏教・イスラム教)を学ばせています。総合の時間は、プログラミングです。僕自身もコロナにより、在宅が多くなり、子供の学習に係るきっかけをつくれたと思っています。家庭学習の重要性は理解していますが、学校の果たすべき役割を果たして欲しいと思います。
「先ず、やってみる」です。子供が教育を受ける権利を1日たりとも奪ってはなりません。
編集部より:この記事は多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授、福田峰之氏(元内閣府副大臣、前衆議院議員)のブログ 2020年4月2日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、福田峰之オフィシャルブログ「政治の時間」をご覧ください。