国が滅びるレベルの国難を自分ゴトとして捉えられない政治家たち

武漢での新型コロナ感染による死者が報道され始めた1月下旬から入国拒否も含む水際対策の徹底を訴え、2月下旬からは「あやふや要請」ではなく、法に基づいた措置、つまり緊急事態宣言が必要だと提言してきました。

以下は国会議員時代、参議院憲法審査会(2014.2.26)での私の発言です:

…未曾有の災害に対応できるようにしなくてはなりません。すなわち、憲法上、緊急事態宣言をはじめとした緊急事態法制に関する規定を盛り込む必要があると考えます。これにより、政府が大規模災害時に機動的な対応が可能になるとともに、その限界や責任主体を明確にすることで国家権力の暴走も防ぐことができます。

なぜこのような思いを当時から持っていたか。
理由は単純です。

写真AC:編集部

今回の新型コロナ問題の前にあった最大の危機、東日本大震災と原発メルトダウン問題に自分ゴトとして取り組み、発生の翌々日から現地に何度も入って活動をしてきたからです。原子炉建屋での水素爆発が続いた直後にも福島に入っていました。

その頃、政府はまだ原発の状態も認めていません。その時(2011.3.16)のブログにもこう書いてあります:

…私が今まで企業のトップとして学んできた事は、何か事件が発生した時はすぐに「ベスト&ワーストシナリオ」を計算し、想定する。そして、極力ワーストを回避する為の戦略を練り、その情報を社員(住民)に開示し、共有・共闘する。情報を開示したらパニックが起きるなどと言う人が多いですが、不都合な真実もディスクローズして一緒に行動する方が、最終的には一番良い結果を生むのです。

今だから言えますが、当時は放射性物質の拡散を恐れて雲隠れをしたり、国民には本当の事を告げずに家族だけを西に避難させたりしている国会議員や政府の関係者が多かったのです。

つまり、他人ゴト。自分さえ助かれば良いと思っている政治家の多さに驚きましたし、起きている事が現実として捉えられていないんだなとも思いました。

(実際、家族や親戚のいる岩手、宮城、福島の議員は動いている人が多かったです)

今回の新型コロナ危機も同じです。

仕事に行けなくなり、収入が無くなった人々の声。売上が急減し、給与も家賃も払えなくなった事業者の声。そして今もっとも大変な医療現場の声。

中枢にいる政治家や上級官僚に自分ゴトとして届いていないのが、このスピード感の無さの原因なのです。

自分や家族の生活がかかった労働者としての経験。事業に失敗したら路頭に迷う個人事業主としての恐怖。社員も守れず、多額の借金だけが増えていく経営者の不安。そして何よりも大切な家族が突如治療法の無い病気にかかり、命を奪われる地獄。

このような経験を全くしたことが無い方々が集まってこの国の舵取りをしている現実。

大海原で台風や氷山をかわす経験をしたことが無い人たちが1億3千万人が乗る船の船長や機関士をしているのです。

考えれば考えるほど恐ろしくなります。

自分ゴトとして捉えてもらう為には、情けない話ですが、これも議員時代に提案してきた「失業率やGDPの上げ下げに連動して、国会議員の歳費や期末手当をドラスティックに上げたり下げたりする制度」を導入してもらうしかないのでしょうか。自分たちの収入が減ると思ったら、もう少し自分ゴトとして必死に動いてくれるかもしれません。

本当はこの2ヶ月間、国会議員は週末も休まず与野党で協力して更なる法改正も含め、準備をしてもらいたかった。

しかし、それも出来なかった以上、今はとにかく現行法での緊急事態宣言の発令が1分でも早く必要です。

そして感染拡大が激しい地域はできる限りロックダウンに近い状態に1ヶ月は持っていく。

そうすれば、いま政府が一番気にしているであろう補償の額も抑えられ、必要になる財政措置もある程度見えてきます。逆にこの状態が続けば続くほど生活困窮者も経営破綻も更に増えて、安倍総理が期待しているV字回復など夢のまた夢になります。

そして何よりも、何よりも、医療崩壊を防ぎ、より多くの命を救えることになるのです。

今朝の報道でやっと発令方針だと出ていました。
実はそこが「始まり」にしかなりませんが、即実行して下さい。


編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、元参議院議員の松田公太氏のオフィシャルブログ 2020年4月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。