時務を識る

今般の緊急事態宣言に伴い昨日行われた記者会見で、安倍晋三首相は次の通り述べておられました。

今、私たちが最も恐れるべきは、恐怖それ自体です。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で広がったデマによって、トイレットペーパーが店頭で品薄となったことは皆さんの記憶に新しいところだと思います。(中略)ただ恐怖に駆られ、拡散された誤った情報に基づいてパニックを起こしてしまう。そうなると、ウイルスそれ自体のリスクを超える甚大な被害を、私たちの経済、社会、そして生活にもたらしかねません。

此の「2月末から全国に広がったトイレットペーパーの買い占め騒動に関し、ツイッター上の投稿と商品の販売状況を分析すると、(中略)デマ投稿をそのまま目にした人はほぼいないのに、デマ否定の(善意の)投稿が爆発的に広がるという皮肉な状況が生まれ(中略)、デマ否定投稿の急増と同時にトイレ紙の品不足が進んだ様子がくっきり現れた」とも報じられています。

デロイトトーマツコンサルティングの試算に拠れば、スペイン風邪流行時(1918~1920年)の「情報伝達力…メディアの普及率と人口、1度に情報を送れる平均人数、1人が1日に受け取る情報量を掛け合わせて算出」を「1」とした場合、新型コロナウイルス流行時の現在SNSの普及等によりその149.9万倍にまで達しています(2002年SARS流行時2.2万倍/2009年新型インフルエンザ流行時17.1万倍)。

此の一種の情報洪水下、嘗てより遙かにフェイクニュースは伝搬し、人に誤解を持たせたり虚偽を真実と思わせたりするような事象が、非常に増えてしまいました。取り分けインターネットで取れる簡単な情報で、所謂フェイクニュースが平気で流れています。

しかし、その発信源に対する責任追及は実効性がないものです。我々は今回の上記騒動も踏まえ、その信憑性に疑義ある情報につき親切心に基づく否定投稿だとしても拡散しない、ということが大事になると思います。

何れにしろ、誰しもが真面な情報を如何に峻別して行くかが課題となっており、その選択で大変苦慮している部分がありましょう。此の取捨選択がきちっと出来ない限りフェイクニュースに振り回され続けるわけで、やはり自分で主体的にものを考え情報の真偽を見抜いて行く選択眼を持たねばなりません。

そのためには、時代の動きを明察し、時局を洞察し、英知と実行力を伴った見識(すなわち胆識)を以て如何なる事変にも悠然として処して行ける人物を目指す努力をし続ける必要があります。『三国志』の中に「時務を識るは俊傑(しゅんけつ)に在り」という司馬徽(しばき)の言葉がありますが、その俊傑に自分がなるしかないのです。深い洞察力で時代の流れをしっかり摑(つか)み、その中で何をすべきかを知る英傑を目指すのです。

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