コロナ禍の直撃で紙の新聞が重大な危機

Jon S/flickr:編集部

折り込みチラシがたった2枚

新型コロナの猛威に比例するかのように、新聞販売店の重要な収入源の折り込みチラシが減り続け、とうとう昨朝9日は、たったの2枚になりました。本紙の新聞広告も自社ものや、明らかに穴埋め用と思える広告が日に日に増え、本社も販売店も経営危機は重症です。

折り込みチラシの枚数が多い新聞ほど、一般家庭に好まれてきました。チラシの枚数は1日平均で13枚という統計もあります。休み明けの月曜日は10枚と少なく、だんだん増え金曜日は18枚、最も多い土曜日は24枚です。昨日は木曜日でもともと少ない日です。それでも2枚という経験はまずありません。

サントリーのセサミンのお試し申込書(無料)と、大正製薬の内臓脂肪をとるタブレットの割引き注文書(500円)の2社です。外出自粛だから2社とも通販、巣篭もり対策になるサプリメントと、よく考えてはいます。8日、7日はスーパーの広告です。

スーパー、ドラッグストア、家電量販店、健康食品、不動産がチラシの上位でした。営業自粛、臨時休業で多くの店が閉まっていますから激減するのは当然でしょう。チラシは街角景気の指標でした。

新聞販売店にとっては、新聞購読料の50%(定価4000円なら2000円)程度が販売手数料として本社からもらえます。それと並ぶのが折り込みチラシの手数料で、1枚につき3円程度の収入が入ります。2000部を扱っている販売店ならば、二つを合わせ月間1000万円程度の売り上げでしょうか。

販売手数料と折り込み手数料が半々とすれば、チラシ収入の激減は大打撃です。販売店を畳むか、別の新聞社に販売委託をするか。消費税引き上げ(昨年10月)を機に、購読を打ち切った読者は多い。新聞という単品だけ配達する販売手法は行き詰る。今回のコロナ不況でダメ押しされる店は多いでしょう。

配達という手足をもがれる新聞本社も苦悶を深めています。ネット版が好調だと強調している日経新聞の紙版を見ますと、苦し紛れの広告が目につきます。子会社の日経テレコンの広告「日経業界分析レポートのダウンロードを」、日経人材事業局の広告「話せる英語力のテスト測定を」です。

朝日はどうか。料金が低いと思われる出版社の書籍広告が1面から7面へと、並んでいます。さらに反響が測定できるので買いたたかれる通販広告が多いですね。読売も苦悶しています。「往復バス、那須高原で春を満喫」「京都の仁和寺の国宝初公開展」などは、外出自粛、他人との接触回避が国や自治体から要請されている時期に不似合いの広告です。

コロナ禍がなければ、7月開催の東京五輪に向け、五輪パートナーの大々的な広告が満載されるはずだっただけに、各紙とも頭を抱えています。

新聞の発行部数は2018年、全国で4000万部弱、その10年前は5000万部でした。総売上高はその間、2兆円から1.6兆円に減りました。うち、広告収入は4800億円から3300億円に急落という惨状です。そこまで減った広告収入にコロナ禍で激震が走る。全国紙から下位2社の脱落が迫っています。

「2021年卒大学生の就職人気ランキング」(日経、マイナビ調査、8日付)によると、新聞は上位100社にどこも入っていない。入院患者の受け入れで、コロナ問題で評判をとったアパホテルが100位につけているのが印象的でした。新聞を読んでいる学生は激減しているから当然なのかもしれません。

人口減、ネット対応の遅れが進んでいるのに、戦後に確立された一県一紙が崩れず、全国紙は5紙体制が長期にわたり続く。硬直しすぎた企業構造、他業界からの参入の阻止、社外からのチェックが効かない独裁的経営者の多さなどの代償を払う時期が本当にきているのかもしれません。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2020年4月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。