大失敗後に健闘したクオモと文在寅を称賛すべきか

コロナ禍の米国でニューヨーク州知事が「次期大統領候補に」と称賛される理由』(AERA 4月13号)など、例によって朝日新聞系など偽リベラル界隈がニューヨーク州のクオモ知事を持ち上げている。

民主党はバイデン元副大統領を大統領候補にすることでほぼ決着ずみだから、バイデン氏が倒れでもしない限り、出馬はありえないのだから、あまり良心的な見出しの記事とは言えない。

少なくともこういう見出しは、トランプを貶めるためなら、なんでも書く連中に引っ張られたフェイク・ニュースに近い印象操作だ。

だいたい、ニューヨークをコロナ渦で悲惨な状況に追い込んだのは、多分に知事の決断力の欠如に起因するものであって、その後の対応が安定していると言っても、全体としては誉めたものでない。

その意味では、新型コロナが中国国外に出たときに大失敗して世界最悪の状況の事態を生じさせたが、その後、なんとか持ち直しには成功した文在寅大統領が誉められているのと似ている。

韓国大統領府Facebookより

文在寅が誉めたものでないのは、以前も書いたが、①死者数などでも日本の人口の4割なのにまだ遥かに多い、②世界各国から閉め出されたことでイタリア発の流行があまり襲来しなかった怪我の功名、③全体主義的と云えるほどの国民管理システム—のお陰だ。

なぜ日本より韓国が誉められることがあるのかと言えば、それほどの事態になったことがない日本はいまの欧米にとって真似しようがないというだけだ。

クオモNY州知事とは

それはともかく、クオモについてちょっと紹介しておきたい。彼の父親はマリオ・マシュー・クオモ(1932年 – 2015年)は、野球選手、政治家、弁護士と渡り歩き、ニューヨーク州知事(1983年〜95年)を務めた。

なかなかの名知事といわれたが、どうして、大統領候補として名前が出ないかといえば、ニューヨークのイタリア系住民の場合、いろんな人間関係があるから難しいのでないかと当時聞いたこともある。

息子の方は、クリントン政権のときに住宅長官を務めたあと、2011年から知事を務めている。また、前妻であるケリー・ケネディ(1990年結婚、2005年離婚)はロバート・ケネディの娘であった。

地下鉄を視察するクオモ氏(2014年。NY地下鉄公式flickr

今回のコロナ危機に際しては、トランプが3月下旬、ニューヨーク州などで都市封鎖を検討している段階で「連邦政府による州への宣戦布告であり、完全封鎖は中国・武漢で行われたことで、我々は中国でもないし、戦時中でもない」と反対し、学校の長期の休校を主張したデブラシオ市長とも対立した。

結果として、都市封鎖に踏み切った3日ほどの差がニューヨークを地獄にし、カリフォルニア州と差が目立っている。カリフォルニア州では2月下旬、国内で初めて市中感染が確認され3月初めまでは西部ワシントン州に次いで感染者数が多かったが、拡がらなかった。

他州に先駆けて「外出禁止令」を出した西部カリフォルニア州が感染拡大を比較的鈍化させ、数日遅れたニューヨーク州では感染爆発状態が生じたのである。

もぬけの殻のマンハッタン(3月中旬、出所:Pamela Drew/Flickr)

それでは、クオモがなぜ支持されているかといえば、ひとつは、トランプの支持率も上がっているように、アメリカでは危機の時は無条件に現職指導者が支持される傾向があることだ。日本のようにリーダーの足を引っ張らない。

第二はトランプとの良好な関係だ。大統領の個人批判はしないし、軍など連邦政府の援助もうまく引き出している。連邦政府軍の工兵隊によって数千床の野戦病院を建設させたり、人工呼吸器を他州に優先して配布してもらったり、米国に2隻しかない病院船の1隻をニューヨーク港に回航してもらった。そのあたりは、大阪府の知事や市長に近いかもしれない。

第三は、弟がCNNの有名キャスター、クリス・クオモであることでも分かるように、天性のプレゼンテーション能力だ。この点は小池知事に似ているかもしれない。「新型コロナ危機は、人類全体の苦痛、心理的な疲労、不安、恐怖だ。(中略)しかし、できることはなんでもやる」といった短いセンテンスで明快な表現は秀逸だ。

「クオモの記者会見で目が覚めるのは最高。トランプ政権の過去3年間、私たちが失っていたものを与えてくれる」(人気コメディアン、チェルシー・ハンドラーのツイート)などとトランプ嫌いは、知事のわかりやすい発言で状況を把握しているようだ。

キャスターの弟のほうは感染し、自宅の地下室で自己隔離しているが、会見でクリスをビデオで参加させたり演出力も傑出している。

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