ベネズエラ大統領に米国が懸賞金:コロナ拡大で今年中に現政権終焉か

米国はベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領の逮捕に繋がる情報提供者に1500万ドル(16億2000万円)の懸賞金を出すことを3月26日発表した。更に、制憲議会議長のディオスダド・カベーリョに1000万ドル(10億8000万円)を含む、同国政府が1999年から組織する麻薬組織カルテル・デ・ロス・ソレス(Cartel de Los Soles)の幹部らを対象に5000万ドル(54億円)の懸賞金を用意していることを明らかにした。この懸賞金の中には解散したコロンビア革命軍の幹部で現在新たに犯罪組織をつくった2人イヴァン・マルティネスとヘスス・サントゥリチも含まれている。(参照:abc.es

マドゥロ氏ツイッターより:編集部

米国はこれまでマドゥロを政権から引き離すべく色々と試みたがどれも進展がなく、今度は米国がメキシコのカルテルの首領の逮捕に懸賞金を出すのと同じやり方に転じた。米国司法長官ウイリアム・バーが「マドゥロ政権は犯罪組織で腐敗している。ベネズエラの市民が苦しんでいる一方で彼らは麻薬密売と汚職で資金を稼いで豊かになっている」と指摘した。

米国の検察によると、この20年間にマドゥロの政権は旧コロンビア革命軍と協力して米国に250トンのコカインを持ち込んだとしている。(参照:abc.es

反米主義者のマドゥロと彼を囲む政権幹部は麻薬の犯罪組織を構成して麻薬を一つの武器にしてそれを米国市場に満たして米市民の健康を損なうことを目標にして来た。コカインはコロンビア革命軍がコロンビアからベネズエラに持ち込み、ベネズエラはそれを中米に向けるフリーハイウェーの役目をして来た。

今回、米国が明らかにした懸賞金に対して、マドゥロはトランプ大統領のことを「みすぼらしい奴だ」と卑下して、それはまたいつもの米国が仕掛けた陰謀だと指摘した。

しかし今回に限っては、常にマドゥロ政権の打倒を望んでいる保守派で現在スペインに在住している元大統領アンドレス・パストゥラナは、マドゥロとの仲介役をする用意があることを表明した。というのは、ベネズエラも他国同様にコロナウイルス感染が拡大しているからだ。彼が望んでいるのは、ベネズエラへの制裁を緩和させて感染拡大を防ぐべく必要な医療医薬品と食料を提供することを容易にさせることだ。

何しろ、ファン・グアイドー暫定大統領に協力している健康専門委員会の報告によると、現在のベネズエラは食料不足の上に、マスクは57%、手袋76%、石鹸76%がそれぞれ不足していることを明らかにしている。ベネズエラを含め今後ラテンアメリカでコロナウイルスの感染が拡大して行くのは必至である。(参照:elpais.comredmas.com.co

更に、マドゥロを苦しめる事態が発生している。ベネズエラの原油の採油や密売を手助けしていたロシアのロスネフチ国営石油会社が、ベネズエラから完全撤退することを発表したからである。ロスネフチとその商社がベネズエラで採油された原油の密売を担当し、それを製油にしたものと交換してベネズエラに提供するといったことが今後できなくなるということだ。(参照:lapatilla.com

その影響もあって、ベネズエラでのガソリンが不足し始めている。現在車の給油が許可されているのは医療関係者、軍部、食品輸送業者とそれに特例で人を連れて行かねばならない場合だけに限定されてしまっている。その影響でカラカスの地下鉄の運行も停止となっている。(参照:elpais.com

その一方で僅かに明るいニュースもある。マドゥロ政権に理解を示す左派系のメキシコ大統領アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドールの政権下で、メキシコ企業で石油のビジネスとはこれまで無縁のリブレ・アボルド(Libre Abordo)とその関連企業シュラガー・ビジネス・グループ(Schlager Business Group)がベネズエラの原油と交換で食料を提供することに合意したのである。

これまで試験的に1430万バレルを輸入したという。現在の計画は1500バレルを輸入し、それを21万トンの白いトウモロコシとタンクローリ1000台分の水との交換を計画しているという。この原油の最終の顧客名については明らかにするのを避けたそうだ。一方のベネズエラでは水不足も深刻で汚染された水も市民は口にせねばならなくなっている。
(参照:eleconomista.com.mxjornada.com.mx

米国からの制裁が下されている中でのこの輸入について、バーター取引ということで米国制裁の対象にならないというのが彼らの弁護士の見解だとしている。(参照:infobae.com

コロナウイルスの感染が拡大する中、今年末までマドゥロ政権が続くことは疑わしいように筆者には思える。