新型コロナ感染症に関わる情報発信などにアクセシビリティの問題が多いので、石川准内閣府障害者政策委員会委員長と相談して、4月15日に緊急提言を総務省と厚生労働省に送付しました。多くの有識者から賛同をいただきましたので、提言には賛同者リストも添えました。
以下、緊急提言本文の全文です。
デジタルを活用した公と民のサービスにおけるアクセシビリティ向上について(緊急提言)
新型コロナウィルス感染症の蔓延は経済社会に大きく影響し、外出自粛を迫られた国民は、自らの生活維持のためにデジタルを活用した公と民のサービス(デジタルサービス)をますます利用するようになりました。
総務省と厚生労働省が共宰し、デジタルを活用した共生社会への移行施策を議論した「デジタル活用共生社会実現会議」の報告書には、今日の事態下で実施しなければならない重要な施策が多く書かれています。
デジタルサービスは障害者を含め多様な国民が広く利用するようになりますが、現在提供されているデジタルサービスについて、新型感染症関係を中心にアクセシビリティを検証すると、その多くで対応は不十分です。
たとえば、政府・地方公共団体の新型感染症特設サイトには説明のついていない画像がある、画像PDFが用いられている、動画に字幕や手話がないなどの問題が多数存在し、厚生労働省特設サイトも例外ではありません。地方公共団体には相談窓口が開設されていますが、連絡方法として電話番号しか記載されていない例もあります。情報量の整理と了解性も改善が必要です。
遠隔教育についても教科書・教材・教育サイトのアクセシビリティ対応は不十分です。特に、博物館・美術館・動物園・水族館など教育サイトの多くは「ウェブアクセシビリティ方針」を掲載していません。
遠隔教育・遠隔医療・テレワーク、電子行政・電子商取引など、日常生活のすべての分野でデジタルサービスを利用することになる国民にとって、アクセシビリティ対応の不足は命の問題まで引き起こす恐れがあります。
「デジタル活用共生社会実現会議」の下に設置されたICTアクセシビリティ確保部会の構成員であった我々は、趣旨に賛同いただいた有識者とともに、デジタルサービスにおけるアクセシビリティの改善に一刻も早く取り組むように望み、両省に対して以下の施策の早急な実施を求めます。
- 政府および地方公共団体が運営している新型感染症特設サイトについて、アクセシビリティを検証して早急に不備を改善するよう、総務省と厚生労働省の連名で政府各府省および全地方公共団体に依頼すること。
- 第1項目の依頼にあたっては、地方公共団体から委託契約等のある地域情報を提供する事業者・NPO等に対して、アクセシビリティ対応を取るように依頼すること。
- 遠隔教育・電子商取引などを提供する民間サービス事業者に対しては、アクセシビリティを検証して早急に不備を改善することについて、各事業の所管省庁から業界団体等に対して依頼するように、総務省情報流通行政局より働きかけること。
- 第1項目から第3項目について、総務省サイトに掲載の「情報アクセシビリティの確保」における「みんなの公共サイト運用ガイドライン」等を参照して実施するよう依頼すること。
- 総務省情報流通行政局および厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部は、デジタルサービスのアクセシビリティ対応について公民双方の意識を喚起する啓発活動を実施すること。
「デジタル活用共生社会実現会議」報告書の内容は、アクセシビリティに直接関係する部分以外についても、今後の社会変革を展望すると重要です。アクセシビリティ関連施策とともに、令和2年度本予算および令和2年度補正予算(審議中)を活用して、両省が力を合わせて実現に向けて取り組むようにお願い申し上げます。
最後に、本緊急提言の実現に向けて協力する用意があることを申し添えます。
緊急提言代表者:
石川 准 静岡県立大学国際関係学部教授(内閣府障害者政策委員会委員長)
山田 肇 東洋大学名誉教授(情報通信アクセス協議会電気通信アクセシビリティ標準化専門委員会委員長)