「吉祥寺にぎわい」報道は事実か?人流データで検証

鈴木 邦和

こんにちは、都議会議員の鈴木邦和です。コロナの感染拡大を防ぐために外出自粛の要請が続く中で、週末の吉祥寺のにぎわいが大きな話題になっています。

この記事やその後のテレビ報道を見た方々から「他の地域は協力しているのに吉祥寺だけ休業要請や外出自粛を守っていないのか」「危機感や想像力がないのか」といった厳しい意見が出ています。

吉祥寺のある武蔵野市は、私の地元選挙区です。そして、この記事の第一印象は「写真への違和感」でした。この写真は吉祥寺のサンロード商店街を撮影したものですが、以下の地図の通り、撮影地点からは商店街の奥まで300mあります。写真は望遠レンズを使用して撮影されており、実際の風景よりも奥行きが相当圧縮されています。

*「Google Map」より引用

上記事では「(吉祥寺は)いつも通りの光景」と書かれていますが、実際に住んでいる身からすると、吉祥寺もコロナの流行以前より明らかに人出は減っています。ただ、私の主観で反証することは出来ないので、今回はデータで検証してみました。

「Agoop」の人流データで検証

今回使用したのは株式会社Agoopの流動人口データです。株式会社Agoopは、各人の同意を得た上でスマホから取得した位置情報のビッグデータを取り扱っています。このデータは、各エリアのリアルタイム人口を一定の時間ごとに計測することが出来ます。そして、下図が吉祥寺駅から半径500m以内の人口データです。

グラフが細かいので補足しますと、縦軸はその時間帯の人口、横軸は日時を表しています。青の棒グラフは平日のデータで、オレンジの棒グラフが週末のデータになります。このデータを見ると、

  • 吉祥寺の外出人口は先週末(4月18日 / 一番右のオレンジ)と先々週末(4月11日 / 右から2番目のオレンジ)で大きな差はない
  • 緊急事態宣言の前の週末(4月4日 / 右から3番目のオレンジ)と後の週末(4月11日 / 右から2番目のオレンジ)で少し減った
  • むしろ都知事による外出自粛要請の前の週末(3月21日 / 右から5番目のオレンジ)と後の週末(3月28日 / 右から4番目のオレンジの間)で大きく減った

以上のことがすぐに分かります。そして、昼夜・平日問わずどの時間帯も一定の人口が維持されていることから、吉祥寺駅の半径500m以内には約1万3千人の居住者がいると推測できます(縦軸のpopulationに注目)。同じくグラフから、先週末の最混雑時の人口は約2万3千人なので、先週末の実際の外出人口は約2万3千-約1万3千=約1万人です。

一方で、コロナ流行以前の週末の最混雑時の人口は、上記グラフのデータを平均すると約6万3千人になります。ここから先ほどの推定居住者約1万3千人を引くと、コロナ流行以前の最混雑時の外出人口は平均約5万人です。これらの結果から、あくまでも最混雑時の比較ですが、コロナ流行以前と現在では、吉祥寺の週末の外出人口は約80%近く低下していると云えます。

(ただし、これは最混雑時の比較です。厳密に人出を計算するためには積分が必要ですが、今回は無料で公開されているデータで計算しました。これだけのデータを無料で公開されている株式会社Agoop様に感謝申し上げます。)

吉祥寺はコロナ以前より週末人口が多い

株式会社Agoopが公開している他エリアのデータを見てみると、吉祥寺の特徴は一目瞭然です。下図は、都心の代表的な繁華街として、テレビ等で吉祥寺とよく比較される、渋谷、新宿、六本木のデータになります。

この3エリアと吉祥寺のデータを比較すると、吉祥寺は青の棒グラフよりオレンジの棒グラフが常に高いことが人目で分かります。つまり吉祥寺は都心の繁華街と比較して、元から平日よりも休日の人出が圧倒的に多いのです。都心と比較して吉祥寺を「人が多い」と感じるメディアと、「いつもより随分少ない」と感じる地元民とのギャップは、ここに原因があります。

一日も早く緊急事態宣言を解除できるように

私が今回データを用いて反証した理由は「いつもより80%近く人出が減っているのだから吉祥寺は問題ない」と主張したいからではありません。

ただ、他のエリアと同様に、吉祥寺のお店はどこもお客さんが一気に減って本当に苦しんでいます。しかし、ご自身の生活が苦しくなっても、ひとえにコロナの感染拡大を防ぐために、今は多くのお店が協力して下さっているのです。吉祥寺もそういう商業者と市民の努力を行っていることを、多くの方々に知って頂きたいです。

一方で、吉祥寺の商店街には、生活必需品を買いに来る人が近隣自治体からも集まります。そのような役割を担う商店街が、都心の繁華街ほど人出を減らすのは容易ではありません。先週末は、武蔵野市の市長や職員の方々が、吉祥寺の商店街をまわって外出自粛の声掛けをしていましたが、私も協力金以外に東京都として出来ることをさらに検討したいと思います。

いま全ての都民の方々にご協力頂いているこの緊急事態宣言期間が、一日も早く解除されるよう、東京都としても全力を尽くします。


編集部より:この記事は東京都議会議員、鈴木邦和氏(武蔵野市選出、都民ファーストの会)のブログ2020年4月21日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は鈴木氏のブログをご覧ください。