世界で原油の埋蔵量ナンバーワンの国、ベネズエラで今ガソリンが不足しているという事態が起きている。これまでは首都カラカスでは不足の事態はある程度免れていた。ところが、ひと月前からはカラカスを含め23州の全国レベルでガソリンが不足している。
(参照:diariolasamericas.com)
マドゥロ政権はコロナウイルスの感染拡大を防ぐ為に封鎖策を取っていることで、ガソリンスタンドに給油に駆け付ける車が比較的少ないのを不幸中の幸いと見ている。
それでも夜中3時頃にガソリンスタンドの前の長蛇の列に入って並んでも、5時から給油の開始で11時頃にはその日のガソリンは底を尽きるという状態にある。しかも、給油できても満タンにしてくれない。満タンにしてもらおうとすれば余計に費用がかかる。
当初、多くの市民に自宅軟禁を政府が発令して封鎖策を取ったのはガソリンが不足しているからで、コロナウイルス感染の拡大を防ぐためとは誰も想像しなかったという。
(参照:france24.com)
封鎖の影響で、ガソリン給油に特権が付与されているのは医師、看護師、救急車の運転手、食料配送業者、消防士、軍人、警察となっている。
診療所に以前勤務していたホセ・メディナはバルガス州の病院での勤務の仕事を得たので医師としての特権を利用してフエルテ・デ・ラ・マリナのガソリンスタンドで比較的短時間でガソリンを給油出来た。しかし、満タンにはしてくれなかった。10リッターしか給油してくれなかった。というのも、彼と同様に特権を持っている人の車が後ろに列を組んで待機していたからだった。(参照:france24.com)
ジョエル・エスピノサは食品の配達業者で彼も特権の持ち主だ。前回はオートバイで早朝5時にガソリンスタンドの前に到着した時には彼の前に130人が待っていたそうだ。それで給油が終わったのが11時30分だったそうだ。14リッターしか給油してくれなかったので余分にドルで払って満タンにしてもらったという。
ベネズエラはガソリンは無料(ただ)のようなものであった。しかし、今はドルで支払いが発生している。しかも、皮肉なことに料金はノルウェーでのそれよりも高くなっていて車を満タンにするのに10ドルから20ドルが必要だという。(参照:alnavio.com)
マドゥロ政権は資金が不足していてガソリンも十分に輸入できない状態が続いている。ガソリンの国内需要を満たすには日毎に少なくとも10万バレル分のガソリンが必要とされている。7年前は日毎60万バレルのガソリンを満たしていた。それも資金の欠乏で輸入できない状態だ。
国内にある製油所も20年間、設備改善のための投資もしておらず必要が満たせない状態にある。(参照:alnavio.com)
1998年には日量330万バレルの原油を採油して、その翌年に大統領に就いたウーゴ・チャベスは原油を餌にして近隣諸国にそれを提供して味方に付けて反米主義の旗を掲げていた。しかし、政権の運営で私利私欲に走り、マドゥロ政権になっても汚職や麻薬と金の密売などで僅か20年で国家を完全に荒廃させてしまった。
その一方で、マドゥロは相変わらずキューバに原油を送っている。メキシコで左派政権が誕生してアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領になってからベネズエラの現状を理解してメキシコの企業がベネズエラから原油を輸入、その代わりにトウモロコシと飲料水を送るというバーター貿易を開始している。制裁を課している米国のトランプはこのバーター貿易に違法がないか調査中だという。(参照:abc.es)