橋下氏と維新はいつまで他人のせいにするのか?後編

太田 房江

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2003年、石原都知事と共同記者会見に臨む知事時代の太田氏(都庁サイトより)

太田府政は「放漫経営」をしていたのか?

禁じ手を使ってまで数年間の財政危機をしのいだわけですから、当然のことですが、着任直後から10年計画で、平成23年度(2009年度)を一定のめどに財政再建計画を策定し、行財政改革を断行しました。赤字体質からの脱却と減債基金の借り入れを減らす努力も精一杯しました。

維新の皆さんには10年以上、放漫経営をしていたようにさんざん罵られましたが、私も断腸の思いでリストラに踏み切り、借金を減らしてきたのです。

これにより、橋下氏に引き継ぐまでの8年間、府の財政の実質収支は2000年に▲400億円であったものを、2008年には▲7億円まで、いわばV字回復させることができました(資料3再掲)。

資料3:大阪府決算額推移・実質収支(一般会計)

にもかかわらず、私が知事を退任して12年、維新はいつまで私の責任を追及し続けるのでしょうか。

誤解されないようにもう一度申し上げると、私は今回のコロナという国難に際し、自民VS維新というような党利党略ではなく、国民、府民の命と生活を守ることを最優先に、一致団結して当たっていくことに注力すべきです。

ツイッター論争で話題の保健所統廃合について

本筋から離れますが、はからずも私が橋下氏、松井氏、吉村知事と歴代府知事のツイッター論争を通じ注目された、保健所の統廃合の経緯について、ここでは事実だけ申し添えておきます。

まず前提として国が進める行財政改革の方針があり、太田府政は、15の本所、14の支所を、2005年に14の本所に集約して、SARSなどの感染症にも対応できるよう機能強化をはかりました。集約のメリットをねらったものです。このことは、吉村知事ご指摘のとおりですが、維新府政でも各市への権限委譲に伴い、保健所は10まで減少。

PCR検査などの体制整備を論じる上で着目すべき職員のマンパワーも、維新府政下でさらに削減され、太田府政の最終年からは約3分の2の514人となっています。(資料4参照)

資料4:保健所組織の変遷について

大阪府は今こそ基金を活用すべき

番組では、橋下氏は、コロナ対策のために地方債発行の可能性にも言及していたように見受けましたが、すぐにできることは財政調整基金の活用でしょう。大阪府の財政調整基金は昨年度までは1500億円規模で推移。今年度は取り崩しましたが、それでも年度当初は現在約1043億円を見積もっています(2月時点:資料5)。

資料5:大阪府の財政調整基金残高の推移

大阪府HPより

私の在任中、最も苦しかった平成18年度(2006年度)は12億まで落ち込みましたから、まず、ここまで再建された維新府政に敬意を評した上で、コロナ危機の今こそ、この基金を大胆に使うべきだと思います。

吉村知事は15日、中小企業に50万~100万円を支給すると表明されました。ただ、財源の半分は市町村との折半。出さない市町村は府の負担分のみ支給するとのことですので、財政基盤の弱い自治体の住民との間で格差が生まれないか懸念は残ります。

府民の命と生活を守るために使う、特に休業補償に見合う協力金に大胆に活用すべきではないでしょうか。

参考までに各自治体の「財調」の規模感を知っていただくために、少し古い資料ですがご紹介しておきますと、総務省が、平成28年度(2016年度)末時点に各自治体の残高を調べたデータでは、大阪府の1,400億円は東京都の6,200億円に次いで全国2位。神奈川県の708億円の約2倍でした。

その神奈川県でも、黒岩知事が4月14日、休業要請に協力した事業者に最大30万円の協力金を支払うと発表しました。財源は、国からの交付金(全国で約1兆円)と、足りない場合は「県の財政調整基金を切り崩してでも支給する」と述べられました(時事通信より)。

政令市でも、349億円の財政調整基金を有する福岡市は、高島宗一郎市長が同日に記者会見し、国からの交付金と基金を活用して、総額100億円を、中小企業や小規模事業者の家賃補助、医療機関・福祉施設への支援などにあてる方針を示しました。

ちなみに、大阪市の財政調整基金は、1491億円と全国の政令市でもダントツです。

未曾有の国難にあって、行政の現場は、国民、府民、メディアから厳しい声にさらされています。私も2000年代前半の財政危機にあって厳しい世論にさらされてきましたし、知事就任前の歴代府政の借金を背負って愚痴をこぼしたくなることもありました。

維新の皆さんの心中も重々お察ししますが、今は要らぬ波風を立てるときではありません。私も国政から大阪のために、できる限りのベストを尽くし、参議院議員としての責務を果たす覚悟です。