マスク:朝日新聞も福井県も公序良俗に反する理由

朝日新聞の3000円マスクはやはり言語道断だ。朝日新聞の売っていたマスクは300回洗えるから1回10円だとか、職人芸だとか馬鹿げた弁解をして朝日新聞を擁護する人たちがいる。

しかし、そういう弁解はおかしい。まず、100円の布マスクでも何十回も洗えるからそれとの比較をするべきだろう。

洗える立体ガーゼマスクを販売していた通販サイト「朝日新聞SHOP」(現在は受注停止中、web.archive.orgより)

しかし、問題はそこでない。あのマスクが朝日新聞のサイトで売られていた時期は、マスクの逼迫感が最高潮に達し、悪辣な転売とか高額マスクがネットにあふれていたときであって、あまりひどいので、転売が禁止されたりした時期だ。

例えば、毎日新聞の記事はこの価格が不当なものでないと弁護している。

「製造したのは、1917年創業の泉大津市の老舗繊維メーカー「大津毛織」。同社によると、マスクは計4層構造。綿は医療用レベルの原料を使うなどし、150回洗濯しても使えるという」

「布製でありながら、立体構造で長時間着けていても不快感がない」

「首相の発言によって、ネットの一部では「ぼったくり」などと表現されて攻撃対象に。担当者は「すごく残念で悲しい。言われっぱなしで我々にはどうしようもなく、対抗策もない。日々マスクを作って届けるしかない」と声を落とした」

それは本当なのかもしれない。しかし、あの状況下で購入する人は、本当にそれが3000円の値打ちがあるか確かめて購入するのでなく、マスクならなんでもいいから飛びついて高値で買っていたのがほとんどだ。

もし朝日新聞がやったことが正当なら悪徳商法をしている業者も同じ弁解をすることができる。これは高級なので高くて何が悪いと言えばすむものではあるまい。人々が災害で食べるものがなく飢えているときに、これみよがしに、公共性の高い企業が、一貫千円のマグロの寿司や、100グラム10000円のステーキを売れば、いくらそれが正当な価格でも批判されると思う。それと同じなのだ。

福井県のマスク配布は買い占め行為

福井県のマスク券配布も政府は阻止すべきだ。各自治体がこのようなことしたりするから不足が起きる。福井県くらいならいいが大阪府などが追随したら市場からは消えてしまう。公共で確保するのは、生産を増やすのに援助して供給総量を増やすのでもなければ、単なる買い占めだ(写真は福井県民向けに販売されるマスク、福井県HPより)。

私はこの問題の最初から、国が一元化して自治体に配分すべきだと主張してきた。マスクが不足しているといっても、公平に分け合えば一般用については最低限のものはあるし、強いものが余計に買うのがいいわけでもない。

本当はマイナンバーカードの所持が義務化されていたら、韓国のように普通にドラッグストアで売り出して、一人一週間に二枚といった制限をしっかりして買い回ることを抑えればいい。しかし、それができないのだから、仕方ないので、都道府県の枠を政府が決めて、都道府県は市町村に配分するなりすればいいのである。市場の全量でなくとも供給されるうちのかなりの部分はそうすればいい。

暇な高齢者が買いあさりをゲーム感覚で楽しんだり、自治体や企業が住民や従業員のために買いあさるのは許されない。パナソニックが自社生産して従業員に供給するというのは、供給量を増やすのだからなんとか許されるだろうが、囲い込みなら絶対におかしい。

孫正義氏が中国から輸入し、それを大阪府が買い取りたいとかいっているが、これもよろしくないし、孫正義氏が別の利権を得るための梃子に使われかねない。

Facebookの私のタイムラインでのコメントでは、「郵便局は一月に一箱50枚入が職員ひとりひとりに支給される。一方、公立病院勤務の看護師はマスクがないという。余っているからあげるよ!と郵便局員。何かおかしくないですか?(子供の同級生の親たちの会話です)」というのもあった。

福井県のことを誉めているマスコミもあるが、これをもっと大きな自治体がやったら収容がかないことになる。いつも書いているように、江戸時代の飢饉は「名君」たちによる買い占めで起きたのだ。今後のためにも、政府は福井県によるこの事業を阻止するべきだと思う。

(参考)福井県が全世帯に最大100枚分のマスクが買える購入券を配布すると発表し、一部から「絶賛」されている。 購入券は23日以降、郵送され地元企業など県内外の2社が、中国製の不織布マスク30万箱(2350円)を県が仲介し、県内のドラッグストア「ゲンキー」で販売される。購入をあっせんしゲンキーに配送料を支払うらしい。