700年の伝統を誇る英国議会の下院は、4月22日、議場への入場を50人の議員に制限し、ビデオ会議を導入しました。
これは、もはやパフォーマンスではありません。ジョンソン首相が懸命の治療を受けたことはご存知の通りで、いつ、英国議会の議員が感染してもおかしくないからです。
実は、都議会でも各会派の幹事長級の協議を経て、議員が感染した場合の想定を行なっています。議員または議員の家族などが感染した場合は、速やかに幹事長に連絡し、議会局へ報告。議員本人の場合は、氏名などを速やかに公表することとしています。
しかし、課題も多いです。
先日も4月17日から23日まで、3500億円の補正予算をめぐって、臨時議会が開かれました。もし、議会中に、議員から感染者が出た場合、どうなるでしょうか?
まずは、すぐに保健所と協議し、濃厚接触者を特定しなければいけません。議場も、委員会室も、控室も消毒する必要があります。その間、議会を開けるかといえば、少なくても休会にせざるを得ないでしょう。
すると、3500億円の予算案は議決できずに宙に浮くことになり、協力金の支払いは「延期」ということになります。そんなことは許されないのに。
今回は私が新型コロナ対策特別委員長に選任されたので、できる限りの対策をとりました。委員会室のドアを開ける。マスクは必着。水筒を持ち込み、時間は短縮。議席は、一席ずつ空け、理事者(都庁職員)の出席はできるだけ少なくするなど実施しました。しかし、いつ感染者が出るかはわかりません。
ここからは、誰がどの時点で感染するかによるので、ケース・バイ・ケースであることを前置きしますが、議員に感染者が出た場合、最悪、委員会は中断、打ち切りになることもあり得ます。問題は、採決です。少なくても委員会と本会議の採決抜きに、議会に提出された予算案を可決成立する方法はなく、成立するまで、小池知事は予算の執行ができなくなります。
そこで、検討すべきが、オンライン議会です。結論から言えば、もはや導入するべき。というか、やらなければ、立ち行かなくなる時が来るだろうということ。そこで、検証してみると、またしても法律の壁にぶつかるのです。
地方自治法 第113条
第百十三条 普通地方公共団体の議会は、議員の定数の半数以上の議員が出席しなければ、会議を開くことができない。
上記の規定から、オンライン議会は法的に不可能と見る向きが、方々にありました。しかし、「出席」の捉え方を変えたらどうでしょうか。企業でも、オンライン会議に出ている人を「欠席」扱いではなく、「出席」扱いにしていますし、有事にあたって、この法解釈は許容されるべきではないでしょうか。
もちろん、採決の時も、オンラインというのは、後々、採決の有効性が問われ、あれは無効だ!とでもなったら予算執行を中断するわけにもいかず、大惨事になりますので、まずは、委員会質疑でのオンライン化が検討されて然るべきだと思います。
【地方自治法】
第百四条 普通地方公共団体の議会の議長は、議場の秩序を保持し、議事を整理し、議会の事務を統理し、議会を代表する。
上記をはじめ、地方自治法には「議場」という言葉が10箇所程度出てきます。しかし、これも参集する場所を議場としているのは会議規則第1条ですから、会議規則を改正して、参集場所を変えれば、あとは自治法上の「議場」は読み替えすればいいのではないでしょうか。
いずれにしても、まずは、長時間におよぶ本会議や委員会の質疑から、オンライン化を検討するのが現実的です。実際、台湾の議会では、コロナ前から、本会議場には、ほとんどの議員が控室で質疑を聴くスタイルが定着しており、本会議場にいるのは質問議員と行政当局といった光景になっています。
例えば、都議会の本会議でも、登壇者以外はZOOMで質疑を見守るとか、委員会でも、ZOOMでの質疑を可能にすれば、感染者が出た場合のリスク回避にもなると考えます。幸い、今年から、都議会棟にもWi-Fiが整備され、どこからでもネット接続できるようになりました。さらに、議員には一人一台のiPadも貸与されたところです。
これは、好き、嫌いの問題ではありません。
予算案が成立するかしないか、一刻を争う問題です。こうしたオンライン議会を法的にも担保する自治法の改正を求めるべきとの議論を都民ファーストの会でも行なっているところではありますが、今は有事です。違法にならない範囲で、知恵を出し合い、法の解釈で運用可能な議会運営は、どんどん検討していくべきではないでしょうか。
伝統ある英国議会の運用は、パフォーマンスなんかではなく、危機管理だと痛感しました。