陸自の火砲・戦車は各100両、第7師団は旅団に格下げでいいんじゃないの?

陸自の火砲・戦車は各100両、第7師団は旅団に格下げでいいんじゃないの、というと反論する自称“軍事通”の軍オタさんが結構います。

得てして彼らの反論は情緒です。自分の大好きな国産戦車や榴弾砲は大量に導入してほしい、その方がカッコいいというものです。

それは趣味の話であり、現実社会の国防では通じない話です。
それは都合のいい設定のラノベでも書いてくださいとしかいいようがない。

現実世界では防衛費の上限が存在します。現在補正予算含めて6兆円弱ですが、これを何倍に増やすことは不可能です。何しろ国の借金はGDPの2.3倍、国債償還費用は国家予算の約四分の一で、歳入の約三分の一は国債による借金で世界最悪です。

また隊員を増やすのも予算もかかるし、若年層が減っていく中、現実的ではありません。だから防衛省も採用する隊員の条件を緩和したりしているわけです。

軍隊に傾斜配分するような国が好きならば中国や北朝鮮にでも移住を進めます。国民が餓死しても軍隊に資源を集中する国ですからさぞかし楽しい毎日が過ごせることでしょう。

国家の防衛力整備は情弱な軍オタの自己満足のために存在しているわけではありません。
国防のために存在しています。

防衛大綱も大規模な着上陸作戦は想定しにくいと明確に述べています。主たる脅威は弾道サイル、サイバー、島嶼紛争、ゲリラ・コマンドウでしょう。

であれば大規模な戦力は必要ない。かといって全廃もできない。それは将来の脅威がどう変わるかは分からないからです。ですから最小限の機甲、機械化戦力を種火として維持すればいい。不要な装備はモスボールすればいい。

浮いた予算と人員などの資源をサイバーやネットワーク、海空自に振り向ければいい。

火砲、戦車も100両でいいならば現大綱の各300両と比較すれば、少なくみても2000名の隊員が余剰となります。彼らをサイバーやISR、ネットワーク、装備調達部門、海空自の警備など他の用途に転用できます。

第7師団の戦車(陸自北部方面隊ツイッターより:編集部)

例えば北部方面隊の第7師団は旅団に格下げして戦車は英戦車旅団と同程度の60~70両にすればいい。あとは独立戦車連隊でつくって他の方面隊に中隊規模で配備すればいい。富士教導団があるから、実質2個機甲旅団があることになる。それに合わせれば火砲も100門もあれば宜しい。なんなら火砲は装輪式のMLRSを1個連隊ほど追加してもいいでしょう。精密誘導砲弾もないような昭和の砲兵で300門の火砲を維持するよりも100門+MRLS、誘導砲弾を導入した方が戦力強化になります。

戦車を削減できれば予算も浮いてトランスポーターを拡充できるので戦略機動性も高まります。
すべての師団は旅団にすべきです。師団と旅団が混合しているなんて胡乱なことはやめるべきです。旅団を集めて師団にすべきです。

その際には准将の階級を導入して旅団長は准将か1佐をあてれば階級インフレも収まります。あと先進的な機械化歩兵旅団は2個つくって、これと機甲旅団で1個師団、更に水機団、空挺団、第一ヘリ団、特殊作戦群(これは増員して旅団レベルにべき)、中央即応連隊で緊急展開師団をつくり(これは現在の中央即応集団を拡大すればいい)、あとは軽装甲車やトラックと軽武装の旅団を3個で後方警備師団として、これを2〜3個師団作ればいい。

これで師団数は4〜5個なので、将官のポストは大幅に削減できるし、方面隊総監部もリストラできます。また軽武装の師団にすれば経費が削減できます。

普通科は中隊の上に大隊を設けて、大隊3個で普通科連隊にします。これも階級インフレ対策になります。また小隊、中隊、大隊、連隊、師団の各レベルで無人機、UGVを導入し、火力、情報部隊、兵站も強化する。衛生も人員を強化して独立させる。衛生師団を作って、そこから各師団に派遣するのもいいでしょう。

少なくとも現在の昭和の軍隊な陸自よりも実質的な戦力はアップすると思います。
火の出る玩具をズラッと揃えれば戦争勝てるなら誰も苦労はしません。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2020年4月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。