小池都知事が東京を国際金融都市にすると発言してから2年以上たちますが、何か変化はあったでしょうか?目に見えたものはなかったと思います。「ITと金融を組み合わせたフィンテックや資産運用を手掛ける海外企業の誘致拡大を目指す」としていました。これに対し識者が指摘したのは税制、言葉、規制の3つのハードルでした。なるほど、そうなのですが、果たしてそれだけで問題は解決するのでしょうか?
当地である財閥系企業の方の講演がありました。ところが行ってみたら残念というか小ばかにしたものでありました。理由は社業に関係する内容については社内の稟議が通らないので会社に関係ない個人の話をするというからです。アメリカ人なら皆、席を立ったでしょう。
日本企業にはこのような閉鎖的な体質の企業が大変多いのです。当地でローカルの金融専門家がその講演をするなら誰でもウェルカム的なところがあるのですが、日本の金融機関の方が講演する場合は来場する方を厳選します。理由は「変な方が来て変な質問をすると困るから」。まるで株主総会の質疑応答ぐらいの構えなのです。逆に言えばそれぐらいの質問もかわせないのか、ということになります。
日本企業が内向きでブラックボックス化している典型的な例なのですが、私が日本に国際金融都市もシリコンバレーもできない本当の理由は企業間の熾烈な戦いである「サル山合戦」が災いしているからだと考えています。
ウォール街もシリコンバレーも世界中の優秀な人材、マネーを取り込み、更に情報のオープンソース化を行い、最新情報をベースに「お前も俺も成長する」という同じ戦地にいる仲間同士のところがあるのです。あとはどれだけ功績をあげて勲章をたくさんとるか「同胞の協力」を展開するのですが、日本企業は先述の通り社外の人間は全部敵で常にやっつけるという立場にあるのです。この狭い考え方では日本は専門分野で世界をリードすることは絶対にないのであります。
7-8年前に徳島県の神山町がITの起業家のメッカのように言われたことがあります。私も現地近くには行ったことあるのですが、地図で見ても恐ろしいほど山間の辺鄙なところであります。ただ、この町に光ファイバー網やケーブルテレビ網がほぼ完備されていることで「仕事してサーフィンして」が売りだったと思います。(徳島の南東部の海岸はサーフィンで有名です。)ではIT起業家にとって成功したのでしょうか?否です。理由は広がりがないのです。
もしもITのメッカになるなら交通の便、宿泊といったインフラから起業家同士が交流し切磋琢磨する土台、関係官庁が刺激を行い投資を継続するインセンティブ、そして自分たちが向かう明白な指針が必要でした。今、同町の社会動態人口動向を見ると2011年のマスコミで話題になった頃に転入が転出を12人だけ上回ります。1970年の統計開始以来2018年まで最初で最後です。つまり言われるほど田舎暮らしとITのリモート性の親和性はなかったのです。
外から見る私には日本には絶対的に世界をリードできる分野がいくつもあります。ロボテック、精密機器、高齢者の介護産業、アニメ、飲食、アートなど本質的に高いレベルを持っているのにそれを全く生かせない歯がゆさがあるのです。なぜ、それを集積して世界に発信できる規模に育て上げられないのか、不思議なのです。
もしも東京を国際金融都市にするのであれば私が考えうる案は一つだけです。仮想通貨金融の世界一を目指すことです。すべての域内投資が為替というハードルを乗り越えらえるような仮想通貨経由ですべての投資銘柄へのアクセスができる仕組みを作り出せれば圧倒的地位を築けます。つまり誰もやったことがない二の足を踏むような領域に入らないとだめだということです。
日本に世界に名だたる集積基地を設けるなら役所も企業もそこで働く人々もすべてが過去からの離脱が必要です。役所や企業は規制をするのではなく、優秀なスタッフが生み出す未知への挑戦をいかにアシストするのか、立ち位置を変えていかねばならないと思います。そうすればもっと優秀な人たちの芽が出てくることでしょう。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年4月27日の記事より転載させていただきました。