市場の濃淡、社会への希望、北米と日本の違い

北米で株式市場と格闘していると一時のHopelessの雰囲気とは打って変わって明るい未来に向かって現金を割安の株式投資に使おうという動きが見て取れます。特にアメリカ各州やカナダの一部の州で緩和策が出始めたことで段階的緩和策の中でどの業種が恩恵を受けるかの探り合いとなっています。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

イメージ的打撃の強かった商業にも打診買いが入っていますが、理由は緩和されれば消費者は殺到すると考えられているからです。そのうち自動車販売や住宅販売も注目されるでしょう。アメリカ人は消費が大好きなのであります。

私はリーマンショックの嵐の最中、このブログである予言をしたことがあります。アメリカでこれから一番伸びる消費はダラーショップ(いわゆる100均)だと。事実、お財布はさみしいけれど何か買いたいという層がダラーショップに大挙して繰り出し、当時、ダラーショップの株価は大いにその恩恵を受けたのであります。

今回の特徴は政府が厚めの対策を各方面に打っているため個人はそこそこのお金を手にしている、だけど使うところがないというのが正直なところであります。アマゾンがあるではないかと言いますが、今や物流が滞り、いつ届くかわからないアマゾンにドキドキすることはありません。

ではなぜ原油が下がるのか、といえば一つには「時差」の関係があると読んでいます。つまり、株式は先行指標ですが、原油は限月という仕組みから目先の貯蔵状態という直近状態を見ている違いであります。その点からすれば原油相場も何か月かかけて一定水準まで戻すことはわかっているのですが、今は売り方のおもちゃにされているように見えます。

金はどうかといえばセーフヘイブンとしての輝きは失せてくるとみています。私は金より値動きの荒い銀関連株を既に売却し、金関連も売り時を見ています。金は「不和」との親和性が高いという意味で使い分けをすべきであります。

では日本はどうなのでしょうか?正直、ニュースのトーンが暗すぎます。悪い、悪いの一辺倒。理由は「こんな悪い時に良いと言ったらにらまれるから」であります。つまり、にやにや笑っている業界はじっと黙って笑いをかみ殺しているというわけです。そして1年ぐらいたってから〇〇会社はあの時こう切り抜けたという話が出てくるのですが、本来ではその話は今すべきなのであります。

味噌と糞を一緒にしている感もあります。例えば日産自動車の赤字とオリエンタルランド(東京ディズニーランド)の赤字は全く意味が違います。日産はダメダメの状態でコロナで防波堤が崩れてしまったパタン。それに対してオリエンタルランドは時期が来れば必ず復活できる赤字です。

首相も首相です。「安倍晋三首相は28日の衆院予算委員会で、経済情勢を巡り『大恐慌の時よりも、ある意味で精神的には厳しい』と述べた」(日経)とあります。私は首相に聞いてみたいです。1929年の大恐慌時における精神的苦しみとはなんであったか、と。多分知らないと思うし、客観性もないはずです。大恐慌と比べれば何でもよいというものではないのです。これは先日のユニクロの柳井正氏の「人類最大の危機」と並ぶ失言だと私は思っています。

首相は日本に希望と明るい未来の道筋を届けるのが仕事です。カナダではトルドー首相が毎朝テレビで国民向けにメッセージを送っています。一方、安倍首相はマスクの奥に隠された顔が見えず、渋い顔のしわが余計増えたような状態です。

私はこの暗いトーンから制限解除に向けたメッセージをどのように送る気なのか、そちらの方が心配しています。その上、テレビニュースはパチンコ屋報道に一生懸命になっているようでは申し訳ないですが、報道機関の価値を考えてしまいます。ほかに伝えることはないのでしょうか?

この辺りがあらゆる立ち位置の変化として現れてくるように感じます。欧米と日本の時間差は当初は2週間程度で今は1カ月近くになり、コロナが終わるときには2-3カ月の差をつけられ、当然、経済復興もその分、遅れるのではないかと懸念しています。この遅れは世界経済の枠組みでは大きなマイナス材料になってしまうかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年4月29日の記事より転載させていただきました。