「9月入学」パフォーマンスで論じるなかれ!

川松 真一朗

東京都議会議員の川松真一朗(墨田区選出・都議会自民党最年少・コロナ対策チーム)です。

5月6日延長の先に更なる課題

今日は教育をテーマにしていきます。

特に、5月6日までの緊急事態宣言について、日本医師会や専門家が「延長すべき」という発信をし始めて、県によっては学校は「5月30日まで休校措置延長」となりました。子供たちをコロナから守るという点では致し方ないのかもしれません。

しかし、それでは教育が遅れ、子供たちの成長が心配だという声も親御さんから頂くようになっています。

そこで、都議会自民党コロナ対策チームの教育班で27日月曜に萩生田文部科学大臣、28日火曜に藤田教育長へ要望書を提出し、それぞれ1時間程度のディスカッションをして参りました。参考に大臣宛の要望書をリンク貼っておきます。

新型コロナウィルス感染症に伴う学校休業への影響についての緊急要望

特に、センシティブな話題で、それぞれ議員の立場や考え方も多種多様であるので、間違った情報発信になってはいけないという判断から、いつもはYouTubeで公開している要望の様子は非公開に致します。ただ、各現場の教育委員会、PTAはじめ教職員の皆さんの思いを文科大臣や文科省職員、東京都教育委員会に率直な現場の生の声をお知らせを出来たと考えています。

オンライン教育を早くという声!端末不足…

Nenad Stojkovic/flickr:編集部

では、具体的に5月6日以降の学校再開オペレーションが最大のテーマです。

よく海外の成功事例や民間手法を取り入れて、オンライン教育を充実を図って欲しいというご意見を沢山頂きます。この状況下では、当然のことです。加えて、子供たちの場合は特に安倍総理による全国休校要請で3月2日から自粛期間で「いつまで家に閉じ込めておくんだ!?」とお叱りを頂いてきました。

私達はコロナと戦いながら、こういった種々のテーマを乗り越える為に、幾つものパターンをシミュレーションしている事を先に述べておきます。

では、そこでどんな課題が出ているのか?

オンライン教育についてです。今、文科省や都道府県、各区市町村が必死になって取り組んでいるのがタブレット端末やwifiルータの確保です。当緊急事態宣言が最初に出ていた7府県が先に動いていたのですが、全国に拡大し文科省も確保目標を増やしたのです。

とはいえ、現在はテレワーク導入企業が急増中で、各企業も通信機器確保が難しくなっていた中での教育現場の動きです。確保は本当に大変です。それ故、私達都議会自民党としては、教育委員会が置かれている区市町村単位では、中々確保が難しいという視点で、文科省が動ける範囲で供給側に教育向けの確保要請をすべきではないかと以前より要望してきました。

ただ確保できたとしても、各都道府県が求めているので配分も丁寧にやらなければなりませんが、これも明日いきなり揃うわけではありません。ですので、東京都なら藤田教育長に、まずは自宅に何かしらノートパソコンやタブレットがある人はそれを使用して頂き、無いという方には学校に設置してあるものを貸し出すなどして、とにかく早く授業を出来るようにとお願いをして実際に動いてきました。徐々にではありますが、通信面での環境は整っていくと思っています。

教科書も一律でなく

では、次はオンラインの内容です。韓国は一斉に先生たちが授業を配信しやっているから見習えばいいじゃないかという声も頂きます。

テレビでも各国の取り組みを紹介している面もあり、日本は遅いなという印象を持っている方も少なくないようです。

実際に日本ではICT教育は取り入れてきたものの、取り入れることが目標になって中身が足りないことも沢山ありました。地元の墨田区でも、数年前に中学校の管理職が「こんなICT教育をやっています」と誇らしげに説明されて、「それで、子供たちは今までに比べて、どんな学習の深化がありましたか?」と聞いたら、管理職が答えられず不機嫌になられたこともありました。

それくらいの意識がベースで、最近になってようやく、どう使いこなしていくかというフェーズに入ったいたという前提のICT環境(10年単位で見るような)が遅れていたこともあります。

一方で、教科書の問題もあります。よく教科書採択が問題になるように、区市町村によって教科書が違います。すると、授業の一律セントラル配信化が難しいのです。出来ても、区市町村単位になります。首長の判断でやれなくもないですが、一自治体がやるには財政面も含めて限界があります。

私は一昨日の会議でも、ならば「緊急事態という事で東京都がニュートラルな一律の授業配信をやったらいいじゃないか?」と提案しました。そうしたら、「誰が中立を決めるのか?また教科書問題のそもそもの議論が始まり一歩を踏み出せなくなる恐れもある」という声も出たのです。では、どうすればよいのかという様々なアイデアが出ていまして、各区市町村教育委員会と詰めの作業が必要になります。

授業数の不足をどう乗り越えるか

しかし、今のまま制度のまま3月に学年末を迎える事になれば、圧倒的に授業時間・コマが足りなくなります。今はかつて決まっていた小学校で1コマ45分、中学校で50分という考え方は柔軟に対応できる学習指導体制になっています。これを、極端な話1時限40分にして、必要コマ数を埋めていく必要もあるかもしれません。それで、1日に消化できる時限を増やしても限界があります。

そして、完全な形でのコロナ終息にならない中では、外に出すこと自体に否定的な親御さんもいらっしゃると思います。そうすると、仮に5月や6月から段階的に学校再開と言っても、「まだ怖い」というご家庭もあるわけです。一方で教室内の社会的距離があるならば、「散歩程度の感覚で登校していいよ」というご家庭もあるわけです。各首長や教育長は、この局面で誰もが安心できる環境をどう生徒たちや保護者に提供できるか悩んでいるところです。

埼玉県は早々と県立高校の休校措置を5月末までと決めたわけですが、高校生になると電車での通学も増えます。これが、また悩ましいところです。当然、私立学校であれば小中から電車も乗る生徒も沢山います。これも考慮しなくてはなりません。

グローバルではないローカルな課題として9月入学

かっちゃん/写真AC:編集部

こういう様々な問題と向き合った時に「9月入学」という考え方はしっくりくるのは私だけではないはずです。

既に授業を行っている地域もありますが、基本は4月から始まっていくはずだった新年度の授業スタートを9月からにしていくという手法です。昨日は、全国知事会でも提案をされていました。

でも、そこでの議論は話す方のほとんどがグローバルに合わせるという趣旨でしたが、私は上記のような背景があって、結果としてグローバルに合わせることで、全ての生徒・学生の学びを保障出来るのではないかと思うのです。但し、国会でも議論になっていますが、これには社会構造全体に関わることです。

それでも、私はガラっと社会構造を変える機会は今しかないとも思います。役所も企業も、何もかもです。当然、そうなれば8月に行っていた夏の甲子園も時期を変えなくてはならなかったりします。

ただ、「このまま空白の1年」となってしまえば、憲法で26条にある教育を受ける権利を無視した形になるわけで、今、各級政治家は真剣に議論しなければなりません。国も都庁も、区市町村の役場も、それぞれが9月が新年度スタートだとなれば、あとは企業の皆様と新卒採用や人事等はじめ諸問題をご理解頂く作業になるのだろうと思います。

教育と地域医療を政治のライフワークとして、ずっとやってきた私です。マスコミでの有識者やパフォーマンス狙いの知事達が言う、グローバルな視点ではなく、生徒達の学びの視点からこの局面は最適解・納得解を導き出すために全力をかける所存です。