護憲、改憲の神学論争から抜け出すための一つの提案が、創憲だったと思うが、創憲の場合は、どんな理念なりどんな政治信条を拠り所として新しい憲法を創るか、という難しい問題があり、結局は創憲の考え方が世論の大勢を占めることなく現在に至っており、相変わらず護憲、改憲のレベルでの議論に止まっていると言っていいだろう。
今日の憲法記念日に向けて各政党からメッセージが発出されているが、残念ながら憲法改正問題について大方の国民の心をグッと惹き付けるほどのインパクトのあるものはなかったようだ。
自民党が、他の政党に対して憲法改正議論への積極的参加を呼び掛けるメッセージは極めて正当なものだと思うが、相変わらず自主憲法制定に固執しているような印象があるのがいささか気に掛かる。
古色騒然だとまでは言わないが、憲法制定から70年以上経過しているの関わらず、相変わらず自主憲法制定と言わなければならないのが、如何にも時流に遅れているように見える。
既に立憲主義を標榜している政党が出て来ているのだから、自主憲法制定と言った現行憲法の制定過程にまつわる忌まわしい記憶を超克した何らかの新しいスローガンを提示して貰いたいものだ。
そういう意味では、国民民主党の談話の方がしっくり来る。
憲法9条の改正を主とした動機としている自民党の憲法改正論議よりも、立憲主義を基調とした憲法改正論議の方が大方の国民の理解と共感を得やすいのではないか。
自主憲法制定ではなく、「時代に合った新しい憲法を創る」という運動を、皆さん、本格的に進められたら如何か。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2020年5月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。