吉野家の牛丼が300円台で食べられなくなる日

内藤 忍

私は吉野家の牛丼(写真)が大好物です。糖質制限に逆行する食べ物であることは良く理解しています。しかし、時々無性に食べたくなる時があります(あ、ご飯は軽めにしています)。これだけのクオリティの食事が、わずか300円台で食べられるのは、東京ならではの食のクオリティです。

そんな東京の飲食店が、コロナショックによる売り上げ減少で、次々と閉店しています。近所にあるラーメン店も、突然閉店の張り紙。繁華街の飲食店も、連休中に看板が外され、テナント募集の告知が貼られていました。大手のチェーン店は何とか生き残るのかもしれませんが、個人経営のお店は相当厳しいと思います。

東京の街としての大きな魅力の1つは、食です。吉野家の例を出すまでもなく、安くて美味しい多種多様なお店が存在する。そしてリーズナブルにいつでも好きなものが食べられる。これは他の都市にはない魅力です。

しかし、このまま自粛要請が続けば、さらに廃業・閉店するお店が増えることでしょう。経済活動が正常化に向かい始めても、もう元には戻りません。

日本の飲食店の高いクオリティーは、店舗間の激しい競争で磨かれてきたと思います。飲食店が減少すれば、需給関係から飲食単価が上昇することが予想されます。

さらに、コストアップ要因も出てきます。コロナウィルス感染が収束に向かったとしても、ソーシャルディスタンスの要請から、店舗のコストは上昇します。

需給関係とコスト要因から、今までのように、高品質なものをリーズナブルに提供しているお店の運営は難しくなるでしょう。

1本160円の焼き鳥、300円台の牛丼、1000円でお釣りがくるお昼の定食・・・。今まで当たり前だった、素晴らしい食文化がもう戻ってこないのは寂しいけれと、現実です。外食は、これまで以上に贅沢なものとなり、先進国の大都市圏と同じような単価に近づいていくのではないでしょうか。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年5月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。