むかし放浪の天才画家山下清が、対面する人物に、「兵隊の位で言うと?」とたずねたという。
新型コロナ問題で、日本の危機を訴えて話題のロンドン在、渋谷健司医師(ロンドン大キングスカレッジ教授)のもう一つの「錦の御旗」のような肩書が、「世界保健機関(WHO)事務局長上級顧問」だ。
このWHO事務局長上級顧問というタイトルが、国連の権威に乗って日本国内で独り歩きしている。なにせ日本では国連サマは神サマ扱いだから。
渋谷健司医師は、まるでWHOドンのテドロス事務局長にピッタリより添う顧問と、連想されかねないが、WHOホームページをよく見ると、WHO事務局内でデジタルヘルス技術アドバイスグループの一人。同アドバイスグループはトップの座長二人に、医師、技師、教授の20人がメンバー、途上国の人物が多いし、なにやらその多くは、ボランティアふうのにおいがしないでもない。
一方で渋谷健司医師には、確かに、“most recently he was appointed as Special Advisor to the Director-General of the World Health Organization on health metrics and data”とある。これが日本向けの「錦の御旗」となっている。
でもWHOホームページをよく読めば、事務局長(配下)ヘルスメトリック・データ部門の特別顧問(スペシャルアドバイザー)と読み取れる。国連でもUNHCRは、国連難民高等弁務官本人と、同弁務官オフィスの同義語となるから、WHO組織でも十分あり得る。
ところでWHOの高官とは〜日本ではすでに2017年10月4日に厚生労働省から、報道関係者各位に「WHO事務局長補に山本尚子氏が就任することが決定しました」と伝えている。
また公益社団法人の日本WHO協会も同10月11日に、「WHOでは7月よりテドロス新事務局長体制がスタートしていますが、この度新しい首脳部の人事が発表され、日本からは前厚労省審議官の山本尚子氏がユニバーサル・ヘルス・カバレッジ及びヘルス・システム・クラスター担当の事務局長補に就任されています」とホームページで伝えている。
日本WHO協会が、WHO新首脳部人事と喜ぶのは分かるが、WHOでの事務局長補はAssistant Directors-Generalで、スイス・ジュネーブにあるWHO事務局幹部は、テドロス事務局長、副事務局長、官房長、それに次席事務局長が4人、さらに山本尚子氏ら、事務局長補が14人もいる。日本のイメージでの新首脳部と言ってもそんなものだ。
国際ビジネスで「バイスプレジデント」とくれば、直訳的に「副社長」とするのがこれまでの日本だった。でも最近は外資系の影響で、支店長代理も、担当課長、担当部長もバイスプレジデント呼称だと理解したようだ。
またかつて日本訳で「世界銀行副総裁」とする日本人女性がマスコミに登場したが、こちらも世銀総裁の下の「(エグゼクティブ)バイスプレジデント」らしく、何人もいる、そのバイスプレジデントの一人で、日本女性の活躍は喜ばしいが、実際は本当の副総裁ではなかった。アメリカ副大統領にしても、平時はヒマなポストだ。
山下画伯に戻るが、分かりやすいという軍隊の階級も各国さまざまで、日本とはズレが多い。軍隊かどうかは別に自衛隊も一部修正されたが、かつて統合幕僚会議議長だった人物が、訪米の際、制服肩章を、当時存在しなかった4個の桜マーク(階級で世界的には大将)にして乗り込んだという逸話もあるほどだ。