コロナ対策に名を借りた都庁のモラルハザードが進む

川松 真一朗

東京都議会議員の川松真一朗(墨田区選出・都議会自民党最年少・コロナ対策チーム)です。

理容業・美容業への給付金

都知事FB、写真ACより:編集部

さて、東京都は4月28日夜8時30分過ぎに東京都理美容事業者の自主休業に係る給付金についてという案内を発表しました。このことについて、1人でも多くの方に知って頂きたい事実を終盤に記します。

本件は都議会自民党幹事長、政調会長記者会見で強く主張しましたがマスコミが取り上げないので私が腹を括って書きます。どうぞ宜しくお願いします。

はじめにこの給付金は、4月30日から5月6日まで自主的に休業をされた理容室・美容院に15万円を給付するという内容です。そもそも、4月7日に発出された緊急事態宣言を受けて、都知事が休業を要請する施設には4月16日から5月6日までの間に休業等のご協力を頂ければ「感染拡大防止協力金」を出しますとして、多くの事業者の皆様にご協力を頂いてきたのでありました。

その終盤になって「STAY HOME週間」にご協力を頂くという意味で、理美容事業者を取り上げ追加的な形で給付金を決めたのでした。この事自体は、遅いくらいであり、「何故?今なのか?」という疑問が多くの方の頭をよぎりました。

そもそも、東京都は4月6日の時点で、都独自の緊急事態措置として休業要請する施設について「100平米以上の理美容業」と準備をしていました。

その後、国と都は「改正新型インフルエンザ特措法」の解釈を巡って、内閣府法制局を巻き込んでの法律解釈論となったわけですが、国の対処方針が1000平米という枠を超え「全ての理美容業について休業を要請しない」施設としたのです。

約1か月前は、クラスター潰しという目的があり、店舗面積の広い理美容業はスタッフも多くクラスターリスクがあることから、都は独自に100平米の面積要件をつけたかったわけですが、全国一律のルールに乗る形になったのです。実際に4月8日から効力を持った「緊急事態宣言」でしたが、何と4月10日に福岡県豊前市の美容室でクラスター発生の疑いという事案が出ました。これを受けて、やはり都のルールで頑張った方がいいという意見もありましたが、同日午後の都知事会見でこれが現実になることはありませんでした。

クラスター対策から趣旨が変わる

元々が感染拡大防止措置でして、クラスターが発生したとしながらも手を打たなかった都がこの残り1週間で突然着手したのか不思議な感じをします。

都の現場では、こうやって予算つけてくれるなら、「うちも怖い」「うちもリスクがある」と様々な事業者から要望の声が大きくなるモラルハザードの雰囲気があります。

特に先に述べたように、「休業要請施設=クラスターの可能性あり」という根本的な立ち位置からいけば、施設を閉鎖すれば間違いなく人はきません。だから、休業をお願いさせて頂き、応じて頂ければ50万円をお支払いするというのは自然な流れでした。しかし、今回は、クラスターではなく、そこで「働いている方々が心配だ」という視点からの給付金という都庁側の説明を聞き、多くの方の思いが噴出した形となりました。

都が発表をする1週間前の4月21日に都議会では協力金をめぐっての質疑を行う「コロナ対策補正予算の特別委員会」がありました。ここで、自民党の前に質問に立った公明党の東村幹事長が「理美容業について一度は対象から外れたが何か支援が出来ないか」という主張を展開されました。

これに小池知事が理美容とは限定せず、要請対象外でも何か出来ないか検討したいという回答があったわけです。自民党は質問の重複を避けるという委員会運営の申し合わせに従い、続く小松議員は本件には触れませんでした。

これを受ける形で理美容業界団体は4月23日に東京都、都民ファーストの会、公明党、自民党に要望書を郵送で提出していたのでありました。少なくとも私達は24日には自民党党本部の岸田政調会長のところに行きましたから、この対象外施設の大変さを伝えたのでありました。

ところが、26日の日曜日になって都知事特別秘書から関係する部局の職員に連絡がいき、理美容への支援について枠組みを作るよう指示があったとのこと。現場は急ピッチで事業計画を立て、28日昼頃には内閣府と擦り合わせを終わらせたのでした。予算規模20億円とも言われる理美容用業への現金給付。かなり、慌てていた様子見は見て取れて、同業界団体は28日の夜遅くになって、各地域支部に情報がまわり、29日の1日で連絡網を回したのです。当然、こういう話になると思っていなかった事業者方々は予約をゴールデンウィーク期間に入れていた等、キャンセル連絡等でバタバタの29日だったようです。

外に人がいない=お客さんがいない

私達は、上記のような流れから「クラスター対策」という意味において理美容業に言及されたのは評価します。当然、今回はあくまで協力金、給付金という名称にはなっているものの、金額の多い少ないは別として家賃支援等の補償的な側面があります。

すると、他の業種も都知事から「生活に必要だから開けておいて」と呼びかけられたものの外に人が出歩いていないわけですから、開店休業状態。私達も協力したんだから、理美容業だけではなく対象を広げてという声が大きくなるのは当然ですよね

そこで、更に込み入った話をします。

私は同席しておりませんでしたが、4月28日という発表された当日のことですが、見過ごせない動きが後に判明します。理美容業は23日の郵送提出に補完する形で、公明党と自民党に補足説明の申し入れを行っていましたが、都民ファーストの会にはしていませんでした。

これを知ってか知らずか分かりませんが、都民ファーストの会議員から業界団体に、自分たちの所にも来て欲しいと何度か連絡があったそうですが、元々付き合いもないし、協力金対象も難しいから「行かない」という決定をしたそうです。ところが、東京都の担当部局から業界の事務局にわざわざ「都民ファーストへ要望したか?」という電話もあったのです。

この時点で、業界団体側は、都民ファースト側のアプローチも含めて、政治事情に巻き込まれる恐れから、先に相談をしていた公明、自民への要望も取り下げるという腹を決めていたそうですが、さすがに都庁担当部長から電話があった事を重く受け止めて、28日の19時頃に関係者のハンコを集めて、代表者が都民ファーストの会へ持っていたのです。

そして、この要望がなされたという「事実」を待ってか、20時半過ぎという、国との調整を終えて、発表出来る状態になってから約6時間後の就業時間外に突如として給付金が発表されたのでありました。

makoto/写真AC

浮かび上がった行政の政治介入

私達はあらためて、2点の問題点を指摘しておきます。

都庁の職員が、議会の会派への要望を「確認」したという行為は、言葉は確認ですが、実質的に「提出の要請」です。気の弱い団体側職員ならば「命令」と捉える方もいらっしゃるかもしれません。明らかに、これは行政の政治介入です。

今回は、あまりにも急な展開で、事業全貌が不透明だったが故に、都議会自民党コロナ対策チームが時系列で動きを追いかけて初めて分かった問題ですが、業界団体絡みの施策がこれまでも展開されてきた中で、今回同様の事が行われていた可能性は否定できません。

2点目として、都民ファーストの会は、これまで一方的に既存の都議会は業界団体との癒着だと批判を展開しておきながら、私達、自民党でも考え付かないような強引な手法で団体への利益展開をしていた可能性です。

しかも、筋が悪いのは、このコロナ対策と言えば何でも通せるような感覚の中で、20億円規模の予算を自分達に要望が来たか来ないかで団体側に示す手法は都民・国民が一斉に声を上げて戦うべき内容です。

つまり、完全にこの事業はモラルハザードを起こしたわけであり、各事業者の皆さんが今回の15万円の給付金の話を聞いて、東京都の予算執行に疑義を唱えるのも当然の話かと思います。

念のため、都議会には共産党、立憲・民主クラブ、みらいという会派があるので、それぞれに今回のような要望はありましたか?と聞きましたが、何も無いとのことでした。それを受けて、東京都産業労働局長には、ただの政治介入ではなく、明らかに「都民ファーストの会へのアリバイ作り」であり看過出来ないということで猛烈な抗議を入れております。

尚、本件については、私達と産業労働局長、次長、担当部長の3名に対する事情調査の様子を動画で記録しています。